目新しい玩具から実用品へ、スマートロボットが中国の消費市場に浸透

米ラスベガスで開かれたテクノロジー見本市(CES2025)で注目を集める、恒之未来(重慶)創新科技が開発したロボット犬「哮天」。(資料写真、重慶=新華社配信)

 【新華社重慶3月19日】中国のネット上で最近、山東省泰安市の泰山風景区でテスト中のロボット犬が荷物の運搬やゴミの収集、運搬を行う様子を撮影した動画が話題となった。風景区の作業員によると、ロボット犬は山を登り、水辺を渡り、障害物を越えることができることから、風景区のメンテナンス作業効率を大幅に高められたという。

 これは中国の消費市場におけるスマートロボットブームを示す一例と言える。今年の春節(旧正月)に9万9千元(1元=約21円)で販売された杭州宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)の人型ロボット「ユニツリーG1」が瞬く間に完売したことや、電子商取引(EC)サイトで各種のバイオニックコンパニオンロボットが人気を博していることから、消費者のスマートロボットに対する認識が「目新しいおもちゃ」から「実用品」へと変化していることがわかる。

 ロボット犬「ユニツリーGo2」の商品レビュー欄に「宅配便を受け取ってくれるだけでなく、高齢者に服薬を促すこともできる」という購入者のコメントがあることからも分かるように、製品は既に多くの家庭で「手の届くところにあるスマートアシスタント」になっている。

 昨年北京市で開かれた第1回中国人型ロボット産業大会で発表された「人型ロボット産業研究報告」では、中国の人型ロボット市場規模は今年約53億元に達し、2029年には750億元にまで成長して世界全体の32.7%を占めると予測されている。

恒之未来(重慶)創新科技が開発したロボット犬「哮天」。(2月14日撮影、重慶=新華社記者/呉燕霞)

 AIが「デジタル脳」の限界を突破して「物理的な身体」を手に入れたことで、スマートロボットは高齢者介護やホームヘルパーなど多様な役割を担うようになり、数兆元規模の市場を動かし始めている。

 情緒的なニーズもまた、より細分化された市場を生み出している。中国のソーシャルプラットフォームでは、「ロボット犬の散歩」をテーマとしたコンテンツの再生回数が1億回を超え、「永遠に離れず寄り添ってくれる」AIペットが多くの若者の孤独を癒やす「サイバーパートナー」となっている。重慶市のロボットメーカー、恒之未来(重慶)創新科技の共同創業者である康嘯虎(こう・しょうこ)氏は、同社が開発した高度集積化小型四足歩行ロボット「哮天」について、重量はわずか850グラムと大人が片手で持つことができ、人間の指示を理解して応答し、「おすわり」やジャンプ、さらにはダンスなどの動作もスムーズに行えると紹介。アプリやリモートコントローラー、拡張現実(AR)・仮想現実(VR)技術など、さまざまな制御方式に対応していると説明した。

 泰山の清掃員に高齢者介護のアシスタント、スマートペット、スマートロボットは静かに中国の消費市場に浸透しつつある。(記者/呉燕霞、楊仕彦、李暁婷)

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