世界初成功、中国の研究者が遺伝子改変したブタ肝臓を脳死患者へ移植

 今回の研究におけるブタ肝臓移植を示した模式図。(西安=新華社配信)

 【新華社ロンドン/西安4月6日】中国の研究チームが英ロンドン時間3月26日、英科学誌ネイチャーのオンライン版に論文を発表し、遺伝子を組み換えたブタの肝臓を脳死患者の体内に移植する手術に世界で初めて成功したと報告した。移植された肝臓は良好に機能しており、移植臓器不足の解消につながる可能性がある。

 中国科学院の竇科峰(とう・かほう)院士(アカデミー会員)が率いる西京医院などの研究チームは、6カ所の遺伝子を組み換えたブタの肝臓を脳以外の基本的な身体機能が維持されている患者の体内に移植した。肝不全の代替支持療法を想定し、本人の肝臓も残した。

 竇氏は新華社の取材に対し、「移植された肝臓が人体内で生理機能を発揮して正常に胆汁を分泌し、血流と病理検査の結果も良好であることを確認した」と話し、移植後10日間の観察期間に超急性拒絶反応やブタ内在性レトロウイルスへの感染も見られなかったと説明した。

 ネイチャー誌は論文についてのオンライン記者会見を開き、既知の研究において世界初となる成功事例であると紹介。昨年3月に完了した研究の成果が論文発表によって国際学術界に認められたとの認識を示した。

 移植学が専門のピーター・フレンド英オックスフォード大学教授は「動物からヒトへの異種臓器移植分野を発展させる重要な研究」と評し、臨床応用は技術的に可能と述べた。

 手術は学術委員会や倫理委員会などの審査を経て、国の関連規定を厳守した上で実施された。患者は重度の閉鎖性頭部外傷により懸命な救命措置にもかかわらず脳死となり、家族が医学の進歩に貢献するため、無償で異種肝移植の科学研究に参加することに同意したという。

 ブタからの臓器移植はここ数年、遺伝子組み換えなど新たな技術によって大きく進歩している。遺伝子を組み換えたブタの心臓や腎臓をヒトに移植した事例は世界で数多く報告されており、移植可能な臓器の不足という難題の解決に役立つとみられている。

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