「人工知能+」が中国の発展の新たなエンジンに

中国の生活関連サービス大手、美団が国内で初めて広東省深圳市の口岸(通関地)に開通した配送ルートを飛行するドローン。(2024年10月撮影、深圳=新華社配信)

 【新華社北京3月8日】今年に入り、中国が開発した人工知能(AI)大規模言語モデル「DeepSeek(ディープシーク)」やエンボディド(Embodied=身体性を有する)AIロボットなどが、際立った性能とコスト優位性から大いに注目され、反響は海外にまで広がっている。現在開催中の全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)全国委員会の会議(全国両会)では、AIが中国の将来的な発展にどのような力を与えるかが、代表や委員たちの話題の的となっている。AI開発は技術模索の段階から大規模な応用の段階に移行しつつあり、中国の経済と社会の質の高い発展の新たなエンジンになると多くの人が考えている。

 AIは「新たな質の生産力」(科学技術イノベーションが主導し、質の高い発展を促す生産力)の重要な原動力となる。中国はここ数年、AI開発を非常に重視しており、発展の勢いは目覚ましい。大規模言語モデルや顔認証、音声認識、スマートロボット、仮想現実(VR)、自動運転などの社会生活への実装が加速度的に進み、教育や医療、科学技術、物流、農業、娯楽、家庭生活など幅広い分野をカバーし、多くの大手企業や中核企業も成長を加速させている。

 5日に発表された「政府活動報告」は、2025年に中国はデジタル経済のイノベーションの活力を刺激して、「AI+(プラス)」行動を引き続き推進し、デジタル技術と製造の優位性、市場の優位性を巧みに組み合わせ、大規模言語モデルの幅広い応用を支援し、インテリジェントコネクテッドビークル(ICV)・新エネルギー車(NEV)、AI搭載スマートフォンやパソコン、スマートロボットなどの次世代スマート端末とスマート製造設備を積極的に発展させることを打ち出している。

北京市海淀区の五棵松万達広場で行われたイベント会場で、来場者と交流するロボット犬。(1月31日撮影、北京=新華社記者/陽娜)

 国務院研究室の陳昌盛(ちん・しょうせい)副主任は、今年の報告は「AI+」行動を引き続き推進するとしており、まさに今回のAI技術躍進の機会を捉え、中国のデジタル技術と製造の優位性、市場規模の優位性を十分に融合させ、大規模言語AIモデルの幅広い応用を推進すると紹介。中国は今年も新技術、新製品、新シナリオの大規模な応用実証行動を展開し、安全性を確保することを前提に、「低空経済」(低高度を飛ぶ有人・無人航空機を活用した経済活動)や教育訓練、医療・ヘルスケアなど、多くのシナリオでAIの応用を加速させると述べた。

 中国が自主開発した大規模言語モデル「ディープシーク」は、業界でAI分野における中国の重要なブレークスルーと見なされ、技術パラダイムの革新と性能の優位性で中国は世界の大規模言語モデル開発の先頭集団に躍り出た。全国政協委員で中国のセキュリティーソフト大手、三六零安全科技の創業者、周鴻禕(しゅう・こうい)氏は、ディープシークに代表される大規模言語モデルについて、技術の自主革新を促進しただけでなく、産業の川上と川下の協同発展をけん引し、多くの産業への大規模言語モデル導入を加速させ、中国の科学技術の進歩と経済成長を促進する重要な力になるとの見方を示した。

 ディープシークが教育にもたらす効果にも期待が寄せられている。最近、中国人民大学や北京建築大学、北京交通大学など北京の多くの大学が、ディープシークの導入を強化し、新技術を活用して教育や科学研究、管理業務に新たな原動力を注入しようとしている。難しい質問への回答や資料探し、文献の収集、データ分析の補助などにいつでも対応することから、「ディープシーク+大学」によるスマートな教育・研究のシナリオが実現されつつある。

北京市南東部の亦荘地区でスマート配送車に荷物を積む配達員。(2月撮影、北京=新華社配信)

 全国政協委員でサイバーセキュリティー大手、奇安信科技集団董事長の斉向東(せい・こうとう)氏は「AIは未来の発展を導く革新的で最先端の技術であり、間違いなく無数の家庭に浸透する重要な共通技術でもある」と述べ、AIは従来型産業のデジタル化における最も重要な変革の原動力として、今では研究開発、生産、管理の全段階で広く応用され、数百のシナリオやモデルが生まれていると紹介した。

 AIの応用は、医療分野でも見通しが明るい。全国政協委員で京東集団技術委員会主席の曹鵬(そう・ほう)氏は、世界経済フォーラムが発表した報告書は、医療AI市場が2024~32年にかけて毎年43%のペースで成長し、市場規模は3兆5800億元(1元=約20円)に達すると予想していると紹介した。

 曹氏は「現在、中国の医療AI産業は良好な発展パターンを形成している。AI大規模言語モデルは、消費者、医師、病院など、さまざまな場面で深く応用され始め、AIは医療・ヘルスケアのあらゆるシナリオで大規模に実装される機が熟している」と述べた。

 中国が17年に発表した「新世代AI発展規画」では、30年までにAIの理論や技術、応用を世界のトップレベルに到達させ、中国は世界の主要なAIイノベーションセンターとなる目標を掲げている。AI中核産業の規模は1兆元を超え、関連産業も10兆元を超えると見込まれている。工業情報化部のデータによると、AI中核産業の規模は現在、5千億元に達し、企業数は4300社を超えている。(記者/魏夢佳、陽娜)

中国の生活関連サービス大手、美団が北京市延慶区の八達嶺長城風景区で開通した同市初の配送ルートを飛行するドローン。(2024年8月撮影、北京=新華社配信)

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