石木ダム建設・収用耕作地に土砂搬入 反対住民「手続きなく柵撤去」 長崎

土砂が搬入された耕作地(手前)。撤去された柵を反対住民が設置し直し、隣接地で工事を続ける県側に抗議を続けた=川棚町

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県は22日、土地収用法に基づき強制収用した事業用地のうち、耕作地への土砂搬入を始めた。県側が反対住民設置の柵を取り外したため、住民らは「工作物を撤去するには手続きがいる」と主張し、作業途中で阻止した。
 この耕作地は水田で、所有権が国に移った後も住民が稲作を続けていた。県河川課によると、現県道と付け替え県道をつなぐ迂回(うかい)路を整備するため、盛り土をする。
 住民らによると、県側は同日午後1時過ぎ、重機で土砂を搬入。その際、イノシシよけのメッシュ柵(長さ約20メートル)を撤去した。現場に駆けつけた住民らは、柵を工作物だと主張し「行政代執行の手続きをしてから(撤去を)」と訴えた。県担当者は「法律の手続きに沿って行っており、(撤去の手続きは)必要ない」と反論した。
 住民らが現場を離れず、県側は隣接する用地で土砂搬入を継続。住民らは柵を設置し直した。この水田で稲作をしてきた川原房枝さん(82)は「来週、田おこしをする予定だった。いきなりで、住民への嫌がらせ」と座り込んで抗議。同じ反対住民の岩本宏之さん(78)は「こうして圧力をかけてくる中では、県と話し合いはできない」と憤った。
 県河川課は「工程に沿って安全を確保して進めていく。危険なので妨害はやめてほしい」としている。県は水没予定地に暮らす反対住民13世帯に対し、収用地での耕作を止めるよう求める文書を先月送付していた。


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