“教員、看護師らに見守られ成長” 長崎県内の医療的ケア児(8歳) 母「関係者に恵まれた」

人工呼吸器が乗っているワゴンの前を、管を持って歩くこはる=県内

 365日24時間、人工呼吸器の装着が必要な園田こはる(8)=仮名=は、長崎県内の小学校に通う2年生。医療的ケア児とその家族を支援する法律が施行される前の2021年4月に入学した。県内で初めて人工呼吸器を装着して地域の小学校に入学した彼女は、家族や学校関係者、医療従事者など多くの関係者に見守られながら成長している。
 新生児仮死で生まれたこはるは蘇生措置を経て遺伝子検査の結果、全国に約100人しかいない指定難病であることがわかった。母の栄子(41)=仮名=は当時看護師だったが、こはるの介護のため退職した。こはるに知的な問題はない。体も自由に動かせるし、会話もできる。だが、人工呼吸器を装着しているためケアが必要だ。人工呼吸器は医療的ケアの中でも難易度が高いため、こはるが起床してから就寝するまで気が休まる時間はなく、就寝後もふいに外れる呼吸器が心配で眠れぬ夜が続いた。
 3歳になり、受け入れてくれる幼稚園を市に尋ねたが近場にはなく、結局地域の児童発達支援センターに通う。小学校も特別支援学校を勧められたが自宅から遠く、何よりこはるが地域の小学校を望んだ。栄子は市教委などにかけあった。

 20年9月、市教委から連絡を受けた地域の小学校の校長はこはると面談。人工呼吸器をつけていること以外は何ら他の子どもと変わらないこはるの姿に、主な課題は人工呼吸器のケアだけだと感じた。栄子は「義務教育の9年間は自分が一緒に登校して呼吸器の管理をする覚悟」との思いが強く、教員らも受け入れに好意的だった。「これなら可能だ」-。こはるは21年4月に、晴れて地域の小学校に入学した。
 特別支援学級に在籍し、1年時は栄子が担任と共にこはるを見守って過ごした。そしてその年の9月に同法が施行。校長は「人工呼吸器の装着はこはるちゃんの個性の一つ。学校として特別なことをしなければとの感覚はなかったが、お母さんが元看護師だったことなど含め、全てが良い形にはまったから実現できたのだと思う」と話す。

 同法施行後、市は看護師を派遣。現在は栄子と担任、看護師の3人でこはるをサポートしている。他の児童と共に机を並べて授業を受ける「交流学級」で過ごすことも多い。
 ワゴンに乗せた人工呼吸器とこはるの喉を約1メートル、重さ約3キロの管がつなぐ。移動時は看護師がこはるの後ろからワゴンを引き、トイレなどワゴンが通れない場所は酸素ボンベに切り替え、こはるが酸素ボンベが入ったリュックサックを背負って動く。時折こはるは「皆と同じように自由に動きたい」とこぼすという。
 看護師への引き継ぎが終われば、栄子の通学が不要になる日もやってくる。「地域や学校関係者に恵まれたと思う。学校で共に過ごせる今を大切にしたい。生まれてからずっと一緒だったから、子離れの準備もしなくちゃですね」。栄子は目を細め、こはるの髪をなでながらそう話した。=文中敬称略=


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