マスクどうなる

 厄介な感染症と並走する学校生活とはこんなものだ-と教えているような一首を見つけた。〈コロナ禍で誰かが居ない教室に慣れてく自分が何か悲しい〉新潟・高2。東洋大が主催する「現代学生百人一首」の今年の入選作から▲クラスの全員がそろう日の方が珍しい。中学も高校も今年の卒業生たちはそんな3年間を過ごしてきたのかもしれない。顔の下半分を知らずじまいのクラスメートもいるのだろう。だから最後ぐらいは-と、卒業式でのマスク着用を巡る議論が熱を帯びている▲「式典の最中は会話がなく、感染リスクは低い」「校歌斉唱の扱いが課題だ」-。〈文部科学省は、政府としてのマスク着用の在り方がまとまり次第、教育委員会などに指針を周知する〉…昨日の記事にあった▲無論、慎重で丁寧な検討は欠かせまい。ただ、記事が伝える議論の様子は大まじめと言うより、どこか大げさで、しかも妙に硬直しているように感じる▲今春の卒業生はこの3年間、何かを決めることや、決定に伴う責任を背負うことが苦手な大人や社会の姿をいろいろな場面で見せられてきた。最後の最後、そんな姿を改めて印象づけてはいないか▲「右往左往」や「二転三転」にしっかり別れを告げ、新しい門出の一歩を…卒業の季節に、そんな決意が試される。(智)

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