2022年の長崎県来訪者2372万人 コロナ前水準に回復傾向 <2023年版九州経済白書>

来訪者数の推移

 九州経済調査協会(九経調、福岡市)は31日、2023年版九州経済白書を発表した。22年の九州(沖縄と山口を含む9県)来訪者数は延べ約3億4530万人、うち長崎県は同約2372万人。いずれも前年を上回り、新型コロナウイルス禍前の水準に回復しつつあると分析した。
 白書のタイトルは「九州地域の観光復興に向けて」。スマートフォンの位置情報データを基に、九経調が提供する観光の人流分析サービス「おでかけウォッチャー」を活用した。
 本県や沖縄県、福岡市、長崎市の回復幅が大きかった。ただコロナ禍前の19年と比べると本県は7割弱にとどまっている。
 白書は、観光行動の変化に対応する施策として、地域資源の魅力向上やワーケーションなど新たな人流の創出、事業者間の主体的な連携を挙げた。
 各地の好事例として平戸市の「城泊」などを紹介。福岡県うきは市や朝倉市などは、コロナ禍でも近距離旅行「マイクロツーリズム」需要を取り込んだ。「自然」「ショッピング」「温泉」のスポットも来訪者を集めた。
 映像作品のロケ地や「インスタ映え」スポットも人気。県内では21年、佐世保市の針尾無線塔に約2万1千人(19年比45.8%増)が訪れた。若年層(20~30歳代)の来訪比率が高かったのは、みらい長崎ココウォーク(長崎市)だった。
 白書は西九州新幹線の開業効果にも着目した。沿線の佐賀県武雄、嬉野両市と長崎市、周辺の雲仙、島原両市の計5市について、22年9~12月の来訪者は計約458万人で前年同期比34.8%増だった。東京や大阪など遠方客が目立った。
 インバウンド(訪日客)の本格回復は24年以降を見込むが、欧米の富裕層の戻りは早いと予想。展示会や国際会議などMICE(コンベンション)需要の回復を想定し、より多くの参加が見込める案件を優先的に誘致する戦略が求められると指摘した。

◎長崎市の動向 近隣から人気のスポットが鍵に

 2023年版の九州経済白書は、長崎市の「ウィズコロナツーリズムの動向」を分析した。もともと他自治体と比べ、観光客に占める遠方客の比率が高く、それが新型コロナウイルス流行で大きく下がった。だが22年9月以降は全国旅行支援や西九州新幹線開業効果もあり、徐々にコロナ禍前の水準に近づいているという。
 白書によると、同市の来訪者数は▽20年=約687万人(19年比45.6%減)▽21年=約539万人(同57.4%減)、▽22年11月まで=799万人(同36.8%減)。
 1人1日当たりの市内観光周遊スポット数は、遠い距離からの来訪者ほど多く、コロナ禍で落ち込んだが回復傾向。ただ新地中華街や思案橋・銅座など、飲食を交えた街歩きの回復が遅れている可能性がうかがわれた。
 直近のデータでは、近距離からの訪問比率が高い県美術館、遠藤周作文学館、市恐竜博物館は遠方からの来訪が他スポットよりも伸びている傾向で、こういった動きは観光回復の鍵になると指摘。来訪者の滞在時間増など新たな価値につながると期待を寄せた。

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