「両校初戦突破に期待」 長崎県高野連・黒江英樹理事長 県勢初 センバツ2校出場インタビュー<下>

「県選抜チームでの試合も検討していきたい」と話す黒江理事長=諫早市、スポーツパークいさはや第1野球場

 -長崎日大と海星、県勢初の甲子園ダブル出場について感想を。
 九州で長崎だけ2校同時出場がなかった。現場の努力に感謝。特に近年は守備力が高く大崩れしない。まずは両校ともに初戦突破を期待したい。

 -盛り上がってきた一方、競技を取り巻く環境は厳しくもなってきている。県内では実力の二極化を懸念する声もある。
 強豪私立と公立の二極化というわけではない。今回は私立が目立ったけど、昨年や一昨年は公立も活躍した。8強を中心に、現実的に甲子園を狙えるチームが多いのは長崎の特徴。離島や郡部で頑張っている学校も少なくない。ただ、毎年100人単位で加盟校(県内56校)の部員が減っている。そこをどう解消していくか。

 -高校野球が人気にあぐらをかく時代は終わった。対策は。県高野連のかじ取りが大事になる。
 早急な対策は難しいけど、力を入れているのは2018年度から全国的に始まった「高校野球200年構想」の事業。第一に小さい子に野球を体験してもらって地道に競技人口を増やす。地域の保育園や幼稚園を訪問してくれる高校も増えている。現在は停滞しているが、軟式野球を引退した中学3年生が硬式に親しむブリッジ(橋渡し)事業も推進したい。

 -競技人口が減る中、中学は軟式以外にも硬式のシニアやボーイズ、ポニーなど複数組織が混在している。地方にはデメリットもあると思うが。
 「200年構想」の中に各都道府県単位の“野球協議会”設立がある。小学から社会人まで硬式も軟式も関係なく構成する野球界全体の協議会。長崎は硬式の社会人チームがないのが痛いけど、協議会はつくってみたいし、そこで一貫した何かをすべきだとは感じる。

 -野球は他競技に比べて中高連携があまり進んでいない印象がある。
 近年はできやすくなって動きも出始めている。選手勧誘の問題から一対一での接触や交流は駄目だけど、複数校での野球教室など、県高野連を通じて中学とのいろんな事業は可能になっている。地区ごとにやるなど、どんどん活用してほしいと呼びかけたい。

 -県大会で入場料を取るのも高校野球くらい。他県では県高野連が県外の強豪を招く招待試合をしたり、上位校に遠征をプレゼントしたり、強化策につなげる例もある。
 選手個人から登録料を徴収して強化費を捻出しているところもあるが、長崎は選手登録料やチームの各種大会参加費を取らず、原則入場料でまかなっている。近年はコロナ禍の制限もあって厳しいけど、資金が増えれば招待試合や県外派遣も考えていきたい。ご理解、ご協力をいただきたい。

 -ほかに検討している事業は何かないか。
 以前、長崎、中、佐世保の3地区で選抜チームをつくって対抗戦をしていた。検討段階だけど、それを再開し、その後に県選抜チームまでつくりたい。選手たちの一つの目標になるし、盛り上がるはず。前向きな九州他県と一緒に、1、2年生チームで11月に試合をできないかと考えている。

 【略歴】くろえ・ひでき 大村高、日体大卒。現役時代のポジションは一塁手、外野手。保健体育教諭で長崎に戻り、対馬高や波佐見高などで野球部監督、部長を務める。2015年から県高野連理事長となり、昨春、九州高野連理事長に就任。長崎北陽台高勤務。60歳。


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