島原半島デマンド交通<2> 「チョイソコうんぜん」普及へ 病院などが停留所スポンサーに

病院前で「チョイソコうんぜん」から降りる利用者。車両側面にはスポンサー事業所のステッカーを貼っている=雲仙市愛野町

 「乗り合い送迎サービスが始まり、運転手役の家族が付き添える日時に左右されず、高齢の患者が通院できるようになった」。長崎県雲仙市愛野町の中村眼科医院、中村宗平院長(49)は歓迎する。市などが運行主体のデマンド乗り合い送迎「チョイソコうんぜん」の停留所兼スポンサーの一人だ。

チョイソコうんぜん

 チョイソコは2020年10月から4町で実証運行し、22年7月にエリアを全7町に広げて本格運行へ移行。市内を4区間に分け、乗客定員6人の乗り合いワゴンタクシー各1台を平日と土曜に走らせる。運転手はタクシー事業者9社が分担。予約制で区間内運賃は小学生以上200円。約2千人が利用登録し、先月は延べ1555人が利用した。
 主な停留所は町中のごみステーションや公民館、市役所・支所などの公共施設。高齢者がごみ出しに行く感覚で外出を支援する狙いがある。現在、停留所は全683カ所に上り、うち52カ所がスポンサー。市はさらに停留所兼スポンサーとなる病院や店舗を募っている。この取り組みは「新たな公共交通の実現に貢献した」と評価され、市は22年の九州運輸局長表彰を受けた。

 チョイソコ普及への期待は大きい。中村院長は「乗り合い送迎の利用が増えることで、視力が落ちた高齢者に運転免許の返納を勧めやすくなり、交通事故も減るはずだ」。中山間部が多く、自家用車がないと不便と分かっているため、運転免許証の返納を促せないもどかしさを口にする。
 運行事業費の面でも、スポンサー収入の存在は心強い。市の試算でタクシー事業者への委託費などを含めた年間の総支出は5300万円。一方でスポンサー料収入800万円、運賃収入230万円などを見込む。収支の不足分は市が負担しているが、市の担当課は「スポンサーを募って停留所を増やしながら市の財政負担を減らし、持続可能な地域交通を確立させる」と意気込む。
 一方で、高齢者の通院が多い午前中などは利用が集中し、「予約が取りづらくなってきた」という声も。通常のタクシー利用を促すか、増便するか、今後の課題になりそうだ。

雲仙市のチョイソコ車両を活用した「道路維持管理支援サービス」の管理画面=同市役所

 さらに市はチョイソコで訪れた先での“足”も提供する。先月から小浜体育館など2施設で電動車いすを貸し出す実証実験に着手。このほか、市民の生活圏を網羅して運行する特性を生かし、車に搭載した震動センサーで路面の異常を感知してデータ収集する「道路維持管理支援サービス」の試行も始めた。チョイソコを足掛かりにした市民生活の向上の模索は続く。


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