「仕事は人生の糧に」産業カウンセラー 西川さん 進路相談、更生サポート 少年院「佐世保学園」閉鎖

少年たちと向き合ってきた個室で「仕事は少年にとっての居場所になる。世の中のためになることをしてほしい」と語る西川さん=佐世保市、佐世保学園

 2023年3月末に業務を停止する佐世保市大塔町の少年院「佐世保学園」。ここでは長年、多くの“外部協力者”が少年たちの更生をサポートしてきた。産業カウンセラーの西川眞里さん(35)=同市在住=もその一人。約120件もの進路相談に応じてきた。「仕事は少年にとって居場所になる。世の中のためになることをしてほしい」と願いを込める。

 学園のカウンセラーになったのは2年ほど前。就労就学の専門家としてできることを考え「少年の自立を支援できたら」と思いたったのがきっかけだ。
 どんな少年がいるのだろうか。「あなたの話は聞かない」と言われるのではないか。自分で希望したものの、実際に少年に会う前は不安になった。
 いざ話してみると、「今どきの若い子」だった。おおむね16~20歳未満。面談場所は小さな個室だった。

 西川さん 「ここを出たら仕事をする?進学する?」
 少年 「進学する気はないけど、仕事はするつもり。でも、長くは続かないと思う。やめるかも」
 西川さん 「どうして?もっと違う、何かしたいことがあるの?」

 出院後の少年らの進路を一緒に考え「自分がどうなりたいか」を聞く。問い詰めることや、後ろ向きな質問はしない。少年の適性と照らし合わせ、実現可能か、周囲のサポートはあるのかなどを一緒に考えた。
 ある少年の志望職業は一つだけだった。経験した仕事しか選択肢になかったのだ。中学を卒業して働いたが、雇用体系など「社会の仕組み」は分からず、言われるがままに使われた。「世の中にはいろんな仕事があるんだよ」。少年が見ている世界を、少しずつ広げていった。
 少年たちは夢を語る時は目をキラキラと輝かせ、いつもと違う明るい表情になり、本音も語ってくれた。
 一方で、自分に向き合えず「何をしたらいいか分からない」と言う少年も。そんな時は「人生で楽しかったこと」を尋ね、野球好きの少年にはスポーツ関係の職業を教えた。「笑顔とかいい表情をした時に話を広げる。一生懸命がんばってきたことが、仕事にもつながると思うから」
 少年にとって労働は、きつくて、お金を稼ぐためだけのものというイメージが強い。だが西川さんは「仕事はきっと人生の糧になる」と言う。職に就いている人の方が再犯率が低いというデータもあるという。
 学園の閉鎖は「さびしいけど、少年の犯罪が減った証し」と受け止める。社会に出て、つらく苦しいこともあるかもしれない。そんな時は「面談で自分に向き合い、考えた日々を思い出して力にしてほしい」。


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