領収書の空白

 「白紙の領収書」は裏金づくりや公私混同の“常套(とう)手段”だ。「ウチの会社ならこんな経費、絶対に認めない」-日本中の経理担当者の大合唱が聞こえてきそうだ▲閣僚3人を立て続けに更迭する羽目になり、さぞ気持ちの休まらない日々を…と想像していたら、今度はご自身の不手際だ。岸田文雄首相の「衆院選選挙運動費用収支報告書」や、関係する政治団体の政治資金収支報告書に、宛名やただし書きのない領収書が多数添付されていたことが報じられている▲領収書の「ただし書き」は金額欄の下にある〈但し○○代として〉というあの記載。ここが空白では何を買ったのか分からない。同様に、宛名のない領収書では誰が買い物をしたのか分からない▲首相は“不備”があったことを認めつつ「支出自体は適正だと確認している」と釈明した。「不備」の一言で済ませていいのか、何のため、誰のための報告書なのか。全く説明になっていないように思える▲強豪国ドイツを下したサッカーW杯の大金星に日本中が沸き、皆の関心がカタールに集中している。ニュース番組の枠も新聞の紙面も有限だ。今夜は注目の第2戦。だが、それはそれ、これはこれ▲感動や興奮のどさくさに紛れて…そんなことを願ってはいないだろうか。見当違いならいいけれど。(智)


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