元寇“木製いかり”引き揚げ 740年ぶり、材質解析へ 松浦・鷹島沖

トラックで輸送するためクレーンで引き揚げられた元寇船の木製いかり=松浦市鷹島町

 鎌倉時代の蒙古襲来(元寇(げんこう))の歴史で知られる長崎県松浦市は1日、同市鷹島沖の海底で2013年に見つかった元寇船の木製いかりを引き揚げた。2日にはいかりの重りの石材を引き揚げる。市は約740年ぶりに海中から姿を現したいかりの計測や材質の解析などを通じ、謎の多い元寇の全体像に迫るほか、引き揚げ手法やトレハロース(糖)を使った保存処理技術に関するデータを積み重ね、水中考古学の発展や元寇船の引き揚げにつなげる考えだ。

約740年ぶりに海中から姿を現した元寇船の木製いかり=松浦市鷹島町

 鷹島沖では1980年から断続的に元寇の遺物の発掘調査が行われている。いかりの引き揚げは94年の港湾工事に伴う緊急発掘調査以来28年ぶり。学術調査としては初めて。現場は、元寇の沈没船が発見され2012年に海底遺跡として初の国史跡に指定された「鷹島神崎遺跡」の外側。

 いかりは鷹島町神崎免の沖約50メートル、深さ約20メートルの海底から出土。重りとして長さ約2.3メートルの石材(推定約300キロ)を本体に貫通させた「一石型」で、鷹島沖では初めて見つかった。

一石型いかりの復元予想図

 木材の大半はフナクイムシ(二枚貝の一種)の食害で失われ、残っていたのはいかりの「歯」と呼ばれる先端の一部。作業は潜水士が木材部分を架台に載せ、浮きの空気量を調整しながら架台ごと海面近くまで浮上させ、水上バイクで近くの養殖業者の岸壁までえい航。岸壁にあるクレーンでつり上げ、トラックに積み替えて近くの市立埋蔵文化財センターに搬送した。事業費は約2千万円。

鷹島町地図

 市は20年11月~21年2月、「元寇のタイムカプセル引き揚げプロジェクト」として事業費をガバメントクラウドファンディングで募集。目標1千万円を上回る1152万3千円が寄せられた。市が寄付者を対象に企画した見学ツアーには2日間で34人が応募。1日は24人が3隻の船に分乗し、友田吉泰市長らの説明を聞きながら作業を見守った。
 作業後に記者会見した友田市長は「将来の元寇船引き揚げに向けた第一歩を踏み出せた」と話した。


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