「かっぱ絵」で人気 清水崑の漫画デジタル化へ 長崎市出身、戦前から活躍

清水崑の代表作「かっぱ川太郎」のワンシーン(長崎市中の茶屋・清水崑展示館蔵)

 長崎市が、地元出身の漫画家、清水崑(1912~74年)作品のアーカイブ化に乗り出す。社会現象となった「かっぱ」作品や世相を切り取る政治漫画など約2千点を、本年度中にデジタルデータとして保存、整理する。近現代史や漫画史をひもとく研究素材として活用するほか、戦前の漫画黎明(れいめい)期から活躍した清水の功績にあらためて光を当てたい考えだ。
 今年は清水の生誕110年に当たる。同市立商業学校(現・長崎商業高)を卒業。戦前に上京して雑誌の挿絵や連載漫画などを手掛け、戦後間もなく新聞の政治漫画を描き始めた。51年に子ども向け漫画「かっぱ川太郎」、翌52年には大人向け「かっぱ天国」の連載が相次いでスタートし、全国で大ヒット。かっぱ絵はCMにも起用された。

清水崑さん(長崎市中の茶屋・清水崑展示館提供)

 アーカイブ化を担当する長崎学研究所の入江清佳学芸員によると、清水が柔らかな曲線で描くかわいらしい「かっぱ」は、それまでの怖い妖怪のイメージを覆したとされる。かっぱ漫画には流行した芸能人やファッションなども登場し、時代性を分析する参考になるという。
 政治漫画などは国会の動きや事件を取材して描いており、入江学芸員は清水について「漫画が特にジャーナリズムに近い時代の漫画家の一人」と評価。清水は古里長崎への思いも強く、長崎くんちやペーロン、精霊流しなどの行事をモチーフにしたかっぱ絵も数多く残した。
 市は、遺族らから寄贈された原画など約3600点を、中の茶屋(中小島1丁目)内の「清水崑展示館」で所蔵。本年度はこのうち約2千点をデジタルカメラで撮影してデータ化し、詳しい目録を作成する。事業費約250万円は文化庁の補助金で賄う。
 同研究所の赤瀬浩所長は「市内で作品を目にする機会を増やし、市民に知ってもらう第一歩にしたい。長崎市として、かっぱをキャラクターにして、SDGs(持続可能な開発目標)などの事業に活用できないか考えている」と話した。残る作品のアーカイブ化については、来年度も文化庁の補助事業に申請予定。


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