西九州新幹線9月開業 交流人口増に期待 恩恵の少なさ指摘も ✓ナガポス×こちさがアンケ

 西九州新幹線(武雄温泉-長崎)が9月23日に開業する。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト(ナガポス)」と佐賀新聞の双方向報道「こちらさがS編集局(こちさが)」の合同企画として、西九州新幹線に関するアンケートをした。長崎、佐賀両県民を中心に約750人が回答。交流人口の増加や地域活性化の起爆剤として期待が集まる一方、在来線の本数減少や沿線以外への恩恵の少なさなど不安、不満も寄せられた。

 九州新幹線長崎ルート(博多-長崎)のうち、武雄温泉-長崎はフル規格の新幹線かもめ、博多-武雄温泉は在来線特急リレーかもめをそれぞれ運行する。回答では、武雄温泉のホーム対面で乗り換える負担の解消や、さらなる時短効果を得るために早期の全線フル規格化を求める声も多かった。

9月開業時の運行ダイヤが発表された西九州新幹線かもめ。走行試験で新大村駅に入る=大村市(小型無人機ドローン「空彩4号」で山下哲嗣撮影)

 ただ全線フルには佐賀県が難色を示しており、新鳥栖-武雄温泉の整備方式は決まっていない。長崎市の50代女性公務員は「(両県の)知事同士で何度も話をしてほしい」と停滞する現状の打開を要望。一方、佐賀市の40代男性会社員は、開発が難航した軌間可変電車(フリーゲージトレイン、FGT)の導入を国が断念した後、全線フルにかじを切った姿勢を批判。「(武雄温泉-長崎の開業を)見切り発車したことは大きな疑問」とした。

 アンケートは5月27日~6月5日にLINE(ライン)で実施。西九州新幹線に関する意見を自由記述で尋ね、計752人(ナガポス392、こちさが360)が回答。 アンケートでは、長崎、佐賀両県民のさまざまな“本音”が寄せられた。

 「小さい頃からの夢。待ち続けたかいがあり万感の思い」。長崎市の50代男性は喜びをこう表現した。先月10日に現地で走行試験が始まり、同市の20代女子学生は「県民のにぎわいを見て、長崎の起爆剤になるのではと思った」。

 人口減少社会において交流拡大効果を望む声は両県から上がった。伊万里市の60代男性パート・アルバイトは「武雄から長崎までが一つの観光エリアとして人気スポットになっていけばすばらしい」。駅が新設された大村市の50代男性会社員は、企業進出の活発化を期待した。

 注文で目立ったのは、乗り換え負担の解消だった。「乗ったらすぐに荷物を持って移動。面倒」(大村市・30代女性パート・アルバイト)、「子ども連れや年配者にはバタバタきついのでは」(諫早市・50代主婦)。特急料金アップへの不満も少なくなく、高速バス利用に切り替えるという人も多数いた。

 かつては佐世保経由ルートが構想されたが、採算性から断念した経緯がある。そのため「県北民としては他人事」(佐世保市・30代女性会社員)、「通過しないので興味がない」(同・60代男性自営業)など地域間の温度差が垣間見えた。新幹線駅からの2次アクセス充実を求める声も多く、開業効果を沿線外にどう波及させるかが課題だ。

 佐賀県民の間では「費用対効果が低い上に在来線も本数減」(江北町・50代男性会社員)、「(観光客は)通過するだけではないか」(神埼市・60代女性公務員)など、デメリットに着目する向きが根強かった。

 並行在来線区間となる鹿島市の40代女性公務員は、子どもが長崎方面に通学。「開業に伴い特急が激減。今後どうすればいいか途方に暮れている」と漏らした。「必要性を感じない」という唐津市の60代男性会社員は「そうはいっても走り出した公共事業は止められない。しっかり有効活用策を考えて」と訴えた。

 「ゆくゆくは大阪まで直通の新幹線実現を」(雲仙市・60代男性)といった全線フル規格化を望む意見は、事業効果を最大化させる観点から長崎県民に目立った。同調する佐賀県民も一定いた半面、「観光客が素通りする状況に拍車がかかる」(佐賀市・70歳以上男性)との危惧も。国や長崎県に費用の肩代わりを求める意見が多く寄せられた。

 「開業後に長崎が盛り上がれば佐賀県の理解を得られて状況も変わってくるのでは」(長崎市・50代男性会社員)、「武雄温泉-長崎でどれだけの経済効果が得られるかで(整備方式未定の)新鳥栖までの方針が決まるのではないか」(佐賀市・40代男性自営業)など、部分開業の効果が将来を左右するとの見方もあった。

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