120年に一度? タケの花咲いた 長崎・中山さん方の裏山 「いいことありそう、わくわく」

稲穂のような見た目の花。雄しべがぶら下がっている=長崎市田中町

 「家の裏山にあるタケに花が付いていました。120年に一度しか咲かないようなので送ってみます」-。長崎市田中町の自営業、中山橘子さん(42)から本紙情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)に写真が寄せられた。インターネットで調べてみると、「タケの花は一生に一度見られるかどうか」とか、「ハチク(タケの一種)は1908年前後に全国で一斉開花した記録があり、2020年代にピークを迎えるのでは」とか、興味深い情報が飛び交っていた。これは県内で一斉開花する兆しかも? 中山さん方の裏山に行ってみた。

 そこは以前、畑だった千平方メートルほどの場所。タケは中山さんが小さい頃からあったという。「梅雨に入って伸びる前に」と伐採したところ、タンポポの綿毛のようなものが目に入った。よく見ると、あずき色の花に雄しべが垂れ下がっていた。「花は初めて見たけれど、イネ科というのがよく分かる。高さが2メートルほどだし、ササかも」と中山さん。

 森林総合研究所関西支所の小林慧人研究員に写真を見てもらったところ、主に観賞用として植えられ、秋から冬にタケノコを出すカンチク(寒竹)の仲間と判明した。タケの花は種類によって咲き方がさまざまで、カンチクは「いくつかの稈(かん)(幹の部分)や枝でのみ開花する『部分開花』のタケとして知られ、毎年のように開花が観察されている」という。

 120年に一度の開花ではなかったが、中山さんは「42年間この地に住んで初めて見つけた花だから、いいことがありそうで、わくわくする」と前向き。まだ刈っていないカンチクは観察を続けて楽しむ予定だ。

 タケは日用品や建築資材のほか、タケノコを食用として活用するために里山に植えられた。だが、プラスチック製品の普及に伴い、1970年代ごろから需要が減少。活用されなくなった途端、生命力が強いため周囲の樹木の生育を邪魔したり、人家まで浸食したりと、竹害が叫ばれるようになった。

 ライフスタイルの変化とともに、あまり見向きもされなくなったタケ。だが、この投稿をきっかけに、花が咲くことが広まれば、めったに見られない神秘的な瞬間に立ち会える人が出てくるかもしれない。後世に記録を残すためにも“世紀の竹花ショー”の目撃者となってみませんか? タケの開花に関する情報はナガサキポストまで。(松岡佑佳)

◎タケの一斉開花

 数十年~100年ほど成長を続けてきた竹林が丸ごと花を咲かせ、遠く離れた竹林も同時に開花する現象。開花時期は主に晩春~初夏。開花後は枯れることから「不吉の前兆」と言われることもあった。竹の花には花びらがなく、垂れ下がった雄しべが特徴。ここ数年で一斉開花が目立つのはハチク、クロチク、キンメイチク。モウソウチク、カンチクなども開花するが、竹林の一部の稈や枝でのみ開花する「部分開花」とされる。

裏山のカンチクを指す中山さん=長崎市田中町

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