潜伏キリシタンの歴史を後世に 五島・奈留島「浜辺の資料館」開館 元長崎市職員の柿森さん建設 信仰用具など150点

柿森さんが収集した潜伏キリシタンに関する品々が並ぶ「浜辺の資料館」=五島市奈留町

 長崎県五島市奈留島の潜伏キリシタン信仰の歴史を後世に伝えようと、元長崎市職員の柿森和年さん(75)が資料館「阿古木隠れキリシタンの里 浜辺の資料館」を私費を投じて建設した。3日、関係者が開館を祝った。
 奈留島にはキリスト教信仰が禁じられた江戸時代、潜伏キリシタンが長崎市外海から移住。明治期に禁教令が解かれた後も、潜伏時代の信仰形式を守り続けた人たちがいた。島内の「江上集落」は、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産になっている。
 柿森さんは奈留島出身で潜伏キリシタンの子孫。長崎市職員を退職後の2008年、自宅兼資料館「隠れキリシタンの里」を建て、聞き取り調査など禁教期の研究を続ける傍ら、民間の立場で世界遺産登録に尽力した。

開設祝別式に臨んだ柿森さん(右)

 「浜辺の資料館」は、これまでに集めた資料を公開して継承に役立てようと増築(約16平方メートル)した。1750年ごろに作成されたと考えられる絹に書かれたオラショ(祈り)や信仰用具の「マリア観音」、儀式に使っていた着物、オラショを記録した文書などを初めて公開。貴重な約150点を展示している。宿泊設備も併設した。潜伏キリシタンが開拓した古道の整備も検討している。
 開設祝別式に約30人が参加。柿森さんや聖心女子大の髙祖敏明学長、イエズス会日本管区長のデ・ルカ・レンゾ神父らが除幕した。
 奈留島出身で潜伏キリシタンの子孫の女性(78)は「先祖が苦労して受け継いできた文化が忘れられようとしているので、資料館はありがたい」と話した。柿森さんは「『世界の宝』に認められた潜伏キリシタンの歴史を掘り下げ、伝えていきたい。研究拠点として充実を図る」と述べた。


© 株式会社長崎新聞社