五島列島 日本ジオパーク認定 長崎県内2地域目 2度目の挑戦結実

日本ジオパークに認定され喜ぶ市民ら=五島市役所

 学識経験者らでつくる日本ジオパーク委員会(委員長・中田節也東京大名誉教授)は28日、貴重な地形や地質が残る自然公園「日本ジオパーク」として、長崎県の「五島列島(下五島エリア)」と北海道の「十勝岳」の2件を新たに認定した。五島列島は2019年度の「見送り」を経て2度目の挑戦が実を結んだ。
 ジオパークは大地を意味する「ジオ」と公園の「パーク」を合わせた言葉。地質などの見どころ「ジオサイト」を教育や観光に生かし、地域の価値や魅力を発信する。
 日本ジオパークは国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界ジオパークの日本版。五島列島は46地域目、県内では「島原半島」に続く2地域目の認定。このうち島原半島など9地域は世界ジオパークでもある。
 五島列島は、約1700万年前から堆積した大陸からの砂や泥の層を基に、火山活動で現在の地形となった。大陸と関係が深いのが特徴で、南方系の植物が各地に自生。複雑な海岸線が天然の良港をつくり、遣唐使船の最終寄港地だった。
 市などは17年、官民でつくるジオパーク推進協議会(会長・野口市太郎市長)を設立。最初に認定申請した19年度は「目的の共有が不十分」などとして見送られた。その後、大地の魅力の継承を理念に、市民ジオガイドの養成や市内小中高生への講座などに力を入れ、昨年、日本ジオパーク委員会に再申請。中田委員長らが現地調査していた。
 認定理由について同委員会は「住民にも理念や目的が共有され、地域団体や子どもたちが積極的にジオパーク活動に参加するようになり、今後の展開が期待される」とした。対象が同市内のため、名称に「下五島エリア」を加えた。
 市役所には市民ら約30人が集まり、朗報が届くと拍手が鳴り響いた。野口市長は「(市内に構成資産がある)世界遺産、日本遺産と合わせた『3冠』となる。新型コロナ後を見据え、にぎわいを取り戻すようしっかり取り組む」とあいさつした。
 市民グループを立ち上げ、認定活動を推進してきた永冶克行さん(73)は「認知度が高まっていたので大変うれしい。観光や教育で多くの人に活用してもらいたい」、現地調査を担当したジオガイドの一人、片山美希さん(34)は「これをスタートに、子どもや住民に分かりやすく魅力を伝えていきたい」と話した。


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