長崎知事選告示まで1週間 保守分裂の見通し 現新5人立候補へ コロナ禍 SNSなど活用

左から田中隆治氏、 寺田浩彦氏、宮沢由彦氏、大石賢吾氏、中村法道氏

 任期満了に伴う知事選の告示(2月3日)まで1週間となった。今月26日時点で現職と新人の計5人=いずれも無所属=が立候補を表明。前回まで現職の中村法道氏(71)=3期目=を支えた自民党県連は、新人で医師の大石賢吾氏(39)を推薦したが、これに反発し中村氏の支援に回る党員も多く、保守分裂選挙となる見通し。投票は2月20日。
 今月24日、中村氏の選対スタッフが県議会を訪れた。中村氏支援の自民などの県議17人を前に情勢を説明し引き締めを図った。陣営によると、現時点で約200団体が推薦。県農政連盟や商工団体などに加え自民地域支部の推薦も相次ぐ。県内最大の労働団体の連合長崎は推薦、国民民主党県連と立憲民主党県連も支持を決めた。
 県市長会と県町村会も中村氏を推薦するが、県内21の首長には温度差がある。石木ダム建設やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を県とともに推進する佐世保市の朝長則男市長は「失政はない。着実に政策を進めている」として支援を明言。南島原市の松本政博市長も「島原道路」の早期完成などを理由に応援する。一方、ある町長は「町内にはいろいろな人がいるので、表立って誰かを支援するのは難しい」といい、ある市長の後援会は自主投票という。
 中村氏は感染急拡大の新型コロナウイルス対策に専念し選挙運動は控える方針だが、県議からは「せめて出陣式には出てほしい」との声も上がる。大石氏側が積極的に会員制交流サイト(SNS)などで“空中戦”を仕掛ける中、中村氏の選対も対抗しSNSで人柄などを発信する考えだ。
 一方、大石氏は「世代交代」を掲げ、県医師連盟、県看護連盟、県薬剤師連盟など医療系団体が推薦。だが新型コロナの対応に追われ、県医師連盟の森崎正幸委員長によると、いずれの団体も「選挙まで手が回っていない」。さらに大石氏自身も感染者に接触したため26日まで自主隔離し、その間はビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って会合などに参加するしかなかった。支援する自民県議らも医療機関訪問を自粛。医療機関にポスター約1千枚を配布して院内掲示を進めている。
 先月下旬に出馬表明したばかりとあって大石氏の知名度は不足。このため自民県連は長崎、佐世保など都市部での浮動票獲得に活路を見いだそうとしている。選対本部長の江真奈美県議は「現職は強い。名簿を集めて電話するという従来型の選挙戦をやっても厳しい」と話す。事務所にライブ配信用のスタジオを設けるなど各種SNSによる情報発信をさらに強化する方針だ。
 大石氏の母校、県立長崎北高の同窓会や、所属していた同校ラグビー部のOB会もバックアップ。約1万2千人の同窓生に支援を求める文書を送付。街頭にも立ち、草の根から支援の輪を広げている。
 中村、大石両陣営からは保守分裂について「中村氏にも自民にもお世話になっており戸惑っている」「党員間でいがみ合いたくないのが本音」と困惑の声も漏れ聞こえる。
 このほか、共産党が自主的に支援する会社社長の宮沢由彦氏(54)は、長崎市内で通勤時間帯につじ立ちを重ねる。市民団体代表の寺田浩彦氏(60)は自身のSNSで、元大学助手の田中隆治氏(78)は電話などで支持拡大を訴えている。


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