長崎県知事選 火種抱え選挙態勢構築へ 自民県連、現職推薦せず 常任総務会、拍手と怒号交錯

常任総務会終了後、谷川選対委員長(右)に意見をぶつける出席者ら=長崎市元船町、平安閣サンプリエール

 知事選を巡り自民党長崎県連は元厚生労働省医系技官の大石賢吾氏(39)の推薦を決めたが、現職の中村法道氏(71)を推す側は依然納得していない。県連は火種を抱えたまま選挙態勢を構築しなければならず、執行部は難しいかじ取りを迫られそうだ。
 「ご了承をいただいて終わりたいので、よろしくお願いします」
 「だめだ、だめだ」
 常任総務会終盤で山本啓介幹事長が懇願すると、拍手に混じって怒号が飛び交った。
 執行部が押し切る形で会を閉じたが、推薦を決めた選挙対策委員会(選対)トップの谷川弥一衆院議員(長崎3区)と、納得できない県議らが口論になる場面もあった。
 この日の決定は、県議会で一つの会派に合流したばかりの自民議員間に新たな火種をもたらしかねない。山本幹事長ら三役と大石氏を推した議員は旧「自民」会派に所属し、中村氏側や自主投票に回ったのは旧「自民・県民会議」の議員だった。その大半が24日、新会派に合流した際、知事選について「県連決定に対する造反行動には厳正に対処する」と役職停止や除名処分があることも確認した。だが、この日の常任総務会では公然と「選対の決定には従えない」と主張する県議もいた。
 選対でも新人との理由で大石氏だけを呼んでヒアリングをしたことに不満が出た。議論が出尽くした後、山本幹事長がいずれか1人の推薦を求めると、会長の古賀友一郎参院議員が「私の元には憤りに満ちた意見が届いている。一本化に突き進めば党員の分断をあおることは火を見るより明らかだ」と双方推薦を提案。執行部の見解が割れたため、いったん休憩を挟み執行部と谷川委員長らが進め方を協議。委員全員の意向調査(投票)で一人を推薦することにした。
 終了後の記者会見で山本幹事長は今後、党員の理解を得られるよう努める姿勢を示しつつも、保守分裂選挙となる可能性も否定しなかった。
 中村氏側の関係者は冷めた口調で言う。「大石氏の推薦は想定内。中村が降りることはない。亀裂が入るのは自民党の方だ」


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