特集 長崎県高総文祭「しおかぜ祭」 生き生きと生徒ら活躍 主な部門大会を紹介

 長崎県内で文化、芸術活動に取り組む高校生の秋の祭典、県高校総合文化祭「しおかぜ祭」(県教委、県高校文化連盟主催)が11月、県内各地で始まった。一部の部門は長崎県で12月に開催する第5回全九州高校総合文化祭長崎大会や、来年夏に東京都で予定されている第46回全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)などの出場者・団体を選出。新型コロナウイルス禍で発表や交流の機会が制限されてきた生徒らが、生き生きと活躍した主な部門大会の様子を紹介する。

 ◎郷土芸能/瓊浦エイサー和太鼓同好会が全国へ 一丸で“恩師”の念願実現

躍動感あふれる演奏で観客を引きつけた瓊浦のエイサー和太鼓同好会=東彼東彼杵町総合会館

 郷土芸能部門の第19回郷土芸能発表大会は6日、東彼東彼杵町総合会館であり、瓊浦高エイサー和太鼓同好会の和太鼓が、初めて全国高総文祭(とうきょう総文)出場校に選出された。顧問の大野大輝教諭(33)に幼少から太鼓を指導し、この日演奏したオリジナル曲「friendship~友情~」の作者でもある長崎市の高木忠弘さんが昨年夏、73歳で死去。「全国へ」という“恩師”の念願を、顧問と生徒が一丸となって実現させた。
 同会は沖縄県の伝統芸能エイサーと、和太鼓の両同好会が合流し2年前発足。1~3年の28人がエイサーと和太鼓の両方に取り組んでいる。
 高木さんは長崎くんちの踊町、銀屋町の演(だ)し物「鯱(しゃち)太鼓」に初奉納(1985年)から携わった。亡き友人への思いを込めて銀屋町のために作った楽曲で、後方の大太鼓が「天国」、前列の太鼓が「現世」を表現。躍動感のある掛け合いが特徴だ。
 同会は数年前の大会から毎年この曲を演奏。高木さんも「全国に行ってほしい」と指導に協力していたが、全国切符にはなかなか手が届かなかった。同会を応援し続けた故人の思いに応えようと大野教諭は今年、鯱太鼓の奉納での歌を新たに楽曲に組み込んだ。「高木さんの銀屋町での日々やくんちへの思いを表現したかった」
 本番では迫力のある演奏で観客を引きつけた。同会に2人いる部長のうち、エイサー部長の今村綾さん(18)は「本番前は緊張したが、たたき始めると心の底から楽しくなった」と声を弾ませる。太鼓部長の小森響輝さん(18)は「みんなで笑い合いながら楽しく練習できるように声を掛けてきた」と、結果につなげた日々を振り返った。
 3年の2人は来夏のとうきょう総文には出場しない。大野教諭は「部長たちが何度も仲間に楽曲の背景を伝えてくれた。本番は音に気持ちが乗り、今までで一番良かった」と2人への感謝を語った。

 成績は次の通り。
 ▽金賞=希望が丘高等特別支援学校(和太鼓)、瓊浦(同)、瓊浦(エイサー)▽銀賞=島原農業(和太鼓)、諫早農業(同)▽銅賞=佐世保特別支援学校(同)、壱岐商業(同)、北松農業(同)、佐世保西(同)

 ◎演劇/初出場の長崎南山 最優秀

初出場で最優秀賞を獲得した長崎南山の舞台=諫早市、諫早文化会館(同校提供)

 演劇部門の第32回演劇発表会県大会は19~21日、諫早市宇都町の諫早文化会館であり、県内11校が参加。初出場の長崎南山が最優秀賞に輝き、大分県で来月開かれる第63回九州高校演劇研究大会に出場する。
 爆心地に近い同校では本年度から、地域の歴史に演劇を通じて触れてもらおうと生徒会内に「表現班」が発足。文化祭などでの発表と並行して県大会出場も目標に掲げ、1~3年の8人が練習に励んできた。
 大会では、県内で高校演劇を長年指導し、本年度同校に着任した毎熊義幸専任講師のオリジナル作品「ぶたのしっぽ」を披露。カトリック校である同校のカウンセラー室を舞台に、挫折から不登校になったラグビー部の生徒と、信仰に疑いを抱く神学生が交流し、互いに悩みを乗り越える物語。同校近くの「如己堂」で晩年を過ごした被爆医師、永井隆博士の言葉もせりふに織り交ぜた。
 全員が演劇未経験者。改めて永井博士の生涯について学び、初挑戦の勢いと、それぞれの個性を武器に熱演を繰り広げた。主役の神学生役を演じた2年の松尾秀さん(17)は「結果を聞いて鳥肌が立った。これまでやってきたことを九州大会でも発揮したい」と意気込みを語った。

 その他の受賞団体・個人は以下の通り。
 ▽優秀賞=長崎北、創成館▽優良賞=聖和女子学院、海星、鎮西学院、瓊浦、長崎日大、西彼杵、大村、諫早商業▽創作脚本賞=毎熊義幸(長崎南山顧問)▽審査員特別賞=鎮西学院、西彼杵▽審査員特別賞俳優賞=山口正紀(長崎北2年)

 ◎自然科学/生物は長崎北陽台

ヒジキの種苗生産について発表した長崎北陽台生物部の松本さん=平戸市、平戸文化センター(同校提供)

 自然科学部門の第27回科学研究発表大会は6日、平戸市岩の上町の平戸文化センターであり、県立長崎北陽台高生物部(生物)など最優秀賞に選ばれた4校5チームが、とうきょう総文への出場権を獲得した。
 13校34チームが参加。口頭発表(物理、化学、生物、地学)と展示発表の2部門に分かれて研究内容や発表の出来を審査した。最優秀賞の内訳は口頭発表の部が▽県立長崎西高物理部▽県立長崎工業高科学部▽長崎西高生物部▽県立大村高理科部―。展示発表の部が長崎北陽台高生物部。いずれも来年2月に沖縄で開かれる九州大会にも県代表として参加する。
 長崎北陽台生物部は、ヒジキを卵から育てる種苗生産の研究成果を報告。数年前から取り組んでおり、今年は潮の満ち引きと同様の作用を起こす装置を作ったり、紫外線を照射したりしたことで、これまで以上に成長を促せたとした。1年の松本隼昇さん(16)は「発表では緊張したが、実用化を目指せるように今後も研究を続けたい」と述べた。

 その他の九州大会参加チーム(優秀賞受賞)は次の通り。
 【口頭発表】▽長崎北陽台数理科学部(物理)▽佐世保北科学部(化学)▽長崎東理学部(生物)▽長崎西地学部(地学)
 【展示発表】▽長崎北陽台生物部(計2チーム出場)▽同数理科学部

 ◎弁論/矢部さん(大村1年)最優秀

弁論部門で最優秀賞に選ばれた大村1年の矢部さん

 弁論部門の第33回県高校弁論大会は5日、長崎市の長崎ブリックホールであり、県内9校の15人が東京五輪・パラリンピックや雲仙・普賢岳災害、差別や偏見、核廃絶・平和など多彩なテーマで弁舌を振るった。最優秀賞には「世界の母子を救いたい」と題して発表した県立大村高1年の矢部小羽紅さんが選ばれた。

 矢部さんは7歳の冬、妹が生まれ喜ぶが、会えたのは春が訪れる頃。「幸せに満ち溢(あふ)れ、ほんのりとミルクの香りがする柔和な病室」ではなく、新生児集中治療室(NICU)だった。「この時私は、出産が常に安全で温かいものとは限らないということを、子どもながらに感じました」
 その経験から産科医を目指すようになった矢部さんは「妊娠・出産の陰影を造り出す『人工中絶』」を憎み、中絶手術を減らすための啓発活動にも取り組む。
 さらに医療水準の低い国々で行われている、冷酷で無慈悲すぎる「安全でない中絶」の問題を知り、その現実を訴え続けることを誓う。「いつか、世界中のお母さんと赤ちゃんが安心かつ安全な現場で適切な医療を受けられるような、そんな周産期医療の現場を確立したい」「医療従事者として自分の役目を精一杯果たせるような大人になりたい」と決意を述べた。
 優秀賞には、県立波佐見高2年の宮城楓さん、県立長崎南高2年の北野遥子さん、青雲高1年のバンダービーン新愛さんが選ばれた。
 矢部さんはとうきょう総文に、優秀賞3人と矢部さんは全九州高総文祭に選出。優秀賞3人のうち全九州で成績が最も上位の生徒もとうきょう総文に選出される。

 その他の入賞者は次の通り。(敬称略)
 ▽優良賞 尼崎春妃(佐世保商業2年)シーリー花ホープ(九州文化学園2年)
 ▽特別賞 渡海碧子(青雲1年)

 ◎放送/円口さん(口加2年)ら全国切符

 放送部門は13日、諫早市宇都町の諫早文化会館で県大会を開き、アナウンス、朗読、ラジオ番組、テレビ番組の4部門で審査を実施。県立口加高2年、円口愛子さん(アナウンス)、県立大村高2年の黒川銀杏さん(朗読)ら各部門の上位の個人・団体が、とうきょう総文や全九州高総文祭への出場を決めた。
 自らの学校のニュースと課題の原稿を読み上げるアナウンス部門には16校30人、課題作品から自分が表現したい部分を抜粋して読む朗読部門には16校32人が出場。
 各校が独自にテーマを設けて制作するラジオ番組部門は16作品、テレビ番組部門は14作品が参加。ラジオ番組は最優秀賞の県立長崎工業高、テレビ番組は最優秀賞の県立長崎西高、優秀賞の県立長崎北陽台高がそれぞれ、とうきょう総文への出場を決めた。

 決定した出場者・団体は次の通り。(敬称略)
 【とうきょう総文・全九州高総文祭の両方に出場】
 ▽アナウンス 円口愛子(口加2年)渡邊紗羽(長崎北2年)尾崎美雨(大村2年)▽朗読 黒川銀杏(大村2年)黒川莉那(同)ハント雅(長崎西2年)▽ラジオ番組 長崎工業▽テレビ番組 長崎西、長崎北陽台
 【全九州高総文祭に出場】
 ▽アナウンス 渡辺あい(活水2年)朝長花咲(大村2年)水越妃良(五島2年)中村眞美加(長崎西2年)渕上果穂(長崎南2年)本多趣有(長崎南2年)中尾凛(大村1年)一安皓希(長崎西2年)尾崎亜唯未(島原2年)▽朗読 土井楓太(長崎北陽台2年)犬塚湊平(長崎西2年)須田智人(大村1年)田口妃梨(大村2年)白浜蒼大(長崎北陽台2年)下釜穂乃果(諫早農業2年)吉岡杏珠(島原1年)伊福誠人(長崎工業2年)向吉智佳子(長崎西1年)▽ラジオ番組部門 諫早東、長崎商業、長崎西、長崎南▽テレビ番組部門 長崎工業、長崎商業、諫早商業

 ◎将棋/男子個人は柏木さん(佐世保南1年)

将棋部門新人大会で男子個人優勝の柏木さん(左)と女子個人の土井さん=長崎市、県立長崎東高

 将棋部門新人大会は13、14日、長崎市立山5丁目の県立長崎東高であり、男子個人は柏木智成さん(県立佐世保南高1年)が優勝。男子団体は長崎東高(早田龍史さん=2年=、森下皓生さん=同=、横田啓史さん=1年=)が頂点に立った。
 男子個人は21人が参加し予選、決勝トーナメントを実施。女子個人は土井詠心さん(県立佐世保東翔高2年)1人が出場し優勝、対戦はなかった。男子団体は4校7チームが出場した。
 個人の優勝、準優勝者は来年1月に徳島市で開かれる第30回全国高校文化連盟将棋新人大会に出場する。

 その他の成績は次の通り。(敬称略)
 【男子】
 ▽個人 (2)横田啓史(長崎東1年)(3)山村雄一郎(佐世保高専1年)森川瑞基(青雲2年)
 ▽団体 (2)佐世保高専(3)佐世保工業、青雲

 ◎その他/日本音楽は佐世保南

 日本音楽部門は13日、佐世保市江迎町の江迎地区文化会館インフィニタスで発表大会を開き、3校が出場。沢井忠夫作曲「螺鈿(らでん)」を披露した県立佐世保南高邦楽部(5人)が金賞を受賞し、とうきょう総文の本県代表に選ばれた。県立佐世保北高と鎮西学院高は共に銀賞だった。
 百人一首かるた部門は3日に大会を開催。県立長崎北、青雲、海星、県立五島の4校が参加し、海星が優勝を果たした。同校は全九州高総文祭に県代表として出場する。


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