衆院選 長崎3区 “主戦場”の大村に注力 無党派層への浸透未知数

山田勝彦候補の陣営が街頭演説の準備をしている横を、谷川候補の選挙カーが通り過ぎる。スタッフは互いに手を振りエールを送っていた=24日、大村市内

 衆院選長崎3区の議席を争う自民前職の谷川弥一候補(80)と立憲民主新人の山田勝彦候補(42)。後半戦に入り、両陣営は3区で最も有権者が多く、地縁にとらわれない新興住民層など浮動票の割合が高い大村市を“主戦場”とみる。だが無党派層にどれだけ浸透できるかは未知数で、票の動きを読みあぐねている。
 「大村と東彼を回るから、勝っている離島は任せると言ってきた」。24日昼すぎ、JR大村駅近くに立った谷川氏は、地元支持者らを前にこう強調した。
 3日前、新聞各紙は勝彦氏と競り合っていると情勢を報じた。これを受け谷川陣営は後半戦の離島入りを取りやめ、大村、東彼3町での遊説活動に集中する方針に転換した。
 市内の演説では、国道34号拡幅の新規事業化や昨年7月の大雨災害への対応など実績を強調する。この日は目と鼻の先で、勝彦氏の陣営が蓮舫代表代行を招いた街宣の準備を進めていた。谷川氏は「自分ほどの企画力や交渉力はあるのか」と38歳下の相手をけん制した。
 谷川氏は強固な後援会に加え、企業や公明党などの組織固めを徹底する。気掛かりは無党派層の動向だ。前回衆院選は大村市で2万2千票を獲得。3区全体では野党候補3人の得票総数を3万票近く上回ったものの、同市だけで見ると票差は1千票ほど。地元議員からは「組織票がある分、投票率が下がったほうが有利になる」との本音も漏れる。
 陣営は同じ都市部でも、佐世保市南部では勝彦氏を上回っていると分析。「選挙は市議の結集力に掛かっている。大村も頑張っているが、佐世保ほどは結集できていない」。谷川氏の檄(げき)に応えようと、大村市議らも連日のつじ立ちで無党派層への浸透を図る。
 対する勝彦氏は元農相の父正彦氏の地盤を引き継ぎ、草の根運動を展開。選対には連合長崎も入り、労組関係者は「大村市でこれほど密に活動したことはなかった」という。
 枝野幸男代表や泉健太政調会長ら党執行部も大村入り。蓮舫氏を迎えた街頭演説で山田氏は「新しい政治を前に進めるには、新しい政治家が必要」と気勢を上げ、聴衆からは拍手が上がった。
 公示後はツイッターをフル活用する。写真や動画の撮影、編集を担う専門スタッフが常駐し、演説や支援者との交流の様子を細かく発信。決起集会や街頭演説をライブ配信している。
 この拡散力を谷川陣営は警戒。ただ勝彦氏の陣営関係者も「自分たちにとっても初めてのことで、効果を分析しながら続けている。発信すればその分、有権者の目に留まる機会は増えるはず」と話す。
 3区では五島が地盤の無所属新人、山田博司候補(51)も大村市などで支持拡大に向け「一票一票掘り起こす」(陣営幹部)。諸派新人の石本啓之候補(52)は独自の戦いを繰り広げている。


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