2021衆院選ながさき 格差社会 氷河期世代に目を向けて

就職氷河期世代支援コーナーで相談をする友川さん(仮名、左)=長崎市川口町、ハローワーク長崎西洋館センター

 長崎市のハローワークに設けられた「就職氷河期世代支援コーナー」。市内在住のアルバイト、友川満之(49)=仮名=は2、3週間に一度、仕事の合間を縫って訪れる。担当者が職探しや面接対策などの相談に乗ってくれるのは心強い。
 4年ほど前から市内のスーパーで働いているが、社員登用がないと分かり、今年1月から正社員となるため再就職先を探している。
 世帯収入の中心は契約社員の妻の給与だ。しかし、それも新型コロナウイルス禍でカットされた。高校生の一人娘の大学進学を考えれば、自分が安定した職に就くしかない。
 宮崎県出身。親の仕事の関係で高校まで県外で過ごし、卒業後は宮崎で就職先を探した。地方では求人が少なく不採用が続いたが、卒業から約3カ月後、父親のつてで、百貨店に正社員として中途採用された。
 販売員として3年半働き、誘いを受けてスーパーに転職。正社員だったが、周囲に量販店などが乱立し、店の売り上げが急減。給料を削られ、生活にも困った。結婚を機に30代で福岡市に移り住んだ。
 福岡ではアルバイトを経て、飲食店やコンビニなどを展開する企業に就職。コンビニの店長となり、正社員だったが昇給もボーナスもなかった。残業が多く、深夜まで仕事に追われる激務で、30代半ばに精神的に不安定な状態になった。
 その後、転職したが、妻の仕事の関係で長崎に移住。既に40代となっていた。
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 厚生労働省などは昨年度から、バブル経済崩壊後の雇用環境が厳しい時期(1990年代~2000年代)に就職活動し、今も就労状態が不安定な人らを対象に、就職活動をサポートし、企業側にも採用を促す取り組みを進めている。
 友川は今年、4社の採用試験を受けたがいずれも不採用。コンビニやスーパーでの実績をアピールしたが、届かなかった。「やはり年齢か…」。同年代の同僚とも「俺たちは見放されているもんな」と愚痴を言い合う。努力してもどうしようもないと思うことも。それでも家族を思えば投げ出すことはできない。
 友川は今年1月、ハローワークを訪れ、自分が「支援が必要な世代」と初めて知った。世代間格差があることにショックを受けた。就職活動では年齢での差ばかりを感じてしまう。「40代、50代で正社員になりたくてもなれない人もいる。われわれ世代にもう少し目を向けてほしい」。そう切実に願っている。
=文中敬称略=

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