現代のハロウィーン? 新上五島の伝統行事「まあだかな」40年超ぶり復活

復活した伝統行事を楽しむ子どもたち=新上五島町

 長崎県新上五島町青方郷の風物詩「まあだかな」。中秋の名月の際、お供えの月見団子やお菓子をもらおうと、子どもたちが家々を訪ね歩く伝統行事だが、少子化などの影響で40年以上途絶えていた。「まあだかな」。そんな声に応えるように、地域の大人たちがこの行事を復活させた。
 前田旅館のおかみ、道津和子さん(60)によると、「もう訪ねてもいいかな、まだかな」という子どもたちのはやる気持ちが名称の由来。それが「まあだかな」のひと言に凝縮され、中秋の名月になると、子どもたちが家々を訪ね歩く光景が定着していた。

縁側に飾られた月見のお供え物。かつては多くの家で見られた

 訪問を受けた家は、栗やふかし芋、お菓子を子どもたちに差し出す。「子どもたちの間で、この家に行ったら栗がもらえるとか、あの家はお菓子だったなど情報が飛び交った」と道津さんは懐かしそうに話す。
 現代で言うハロウィーンだろうか。ただ、「トリック オア トリート(いたずらされるのとお菓子くれるのとどっちがいい)」というほどいたずらっ気たっぷりではなく、どことなく遠慮がちな雰囲気がある。子どもたちの胸を躍らせたこの行事も、少子高齢化、商店街の衰退に伴い久しく途絶えていた。
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 今回「まあだかな」復活を企画したのが太田製麺所社長、太田充昭さん(43)。商店街の活性化と、コロナ禍で我慢を強いられている子どもたちに少しでも楽しんでもらいたいという思いからだが、自身も経験したことがない。年配の人たちに話を聞き、有志で内容を詰めていった。
 中秋の名月(9月21日)からは遅れたが、青方つばき通り商店街(青方郷)を舞台に今月10日開催。約150メートルの通りにある商店など12カ所に目印を付け、子どもたちが立ち寄れるようにした。そこで昔ながらに「まあだかな」と声を掛けると、店主らがお菓子を手渡す。約200人が訪れ、子どもたちのはしゃぐ声が商店街に響いた。

お菓子をもらった子どもたち

 「商店街の結束力も強まったと思うし、今後も続けたい」と太田さんは手応えを感じていた様子。久々に復活した「子どもが主役」の伝統行事。道津さんも「子どもたちが来てくれると商店街が明るくなる」と表情をほころばせた。
 両親と遊びに来ていた町立北魚目小4年の川上桃加(ももか)さん(9)、同青方幼稚園年長の姫奈(ひな)ちゃん(5)姉妹は「スタンプラリーや、あめのつかみどりをして楽しかった」と言って、もらったお菓子を記者に見せてくれた。

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