「規格外」作物の活用で食品ロス削減 新たな価値目的の商品も

規格外ミカンを使ったドライフルーツを製造するスタッフ=諫早市、はってん堂

 食品ロスを少しでも削減しようと、市場で定められた規格に当てはまらない「規格外」作物を活用し独自に加工品を開発、販売する取り組みが長崎県の諫早市内でも静かに広がっている。「もったいない」から始まった取り組みが多い中で、「生産者の収入安定につなげたい」「地元を全国にPRする材料にしたい」などとして新たな価値を目的にした商品も生まれている。
 同市飯盛町の直売所「フレッシュ251」の一角。「熱々コロッケ揚がりました」の声を合図に、町特産のジャガイモを使ったホクホクのコロッケが飛ぶように売れていく。多い日で2800個を売り上げる人気商品が誕生したのは、規格外を何とか商品にできないかとの試みからだった。規格外はその多くが廃棄されており、費用も生産者の負担増となっている。
 規格外の商品化は、市場に出せないため自家用にとコンテナ単位で持ち込まれたミカンがきっかけ。かんきつ類を使ったマーマレード、野菜を使った菓子などを積極的に開発。頂き物ではなく仕入れとして対価を支払うことで、生産者の収入安定に一役買っている。杉内エリカ店長は「生産者に少しでも多くの利益を還元したい」と話す。
 同市多良見町でドライフルーツを製造販売する「はってん堂」。鬼塚利洋代表は居酒屋経営の経験から県産素材の魅力にほれ込み、2018年から規格外のミカンやスイカを使ったドライフルーツやゴボウ茶を開発。素材の味や色をそのまま残す独自のヒートドライ製法が自慢で、賞味期限の長さも魅力に。鬼塚代表は「福山雅治さんが曲のテーマにも取り上げた長崎のミカンが、本当においしいことをPRしたい」と、全国の物産展などに出店するため飛び回っている。
 同市天神町で20年以上ニンジンを生産している、滝商店(滝和久社長)では2年前、糖度の高い新品種を「紅天神」としてブランド化。だが栽培が難しく、約3割は規格外に。せめて味を知ってもらえればとジュースに加工し、パッケージにもこだわってネットなどで販売したところ、「砂糖不使用なのに甘くておいしい」と評判を呼んだ。滝社長は「青果売り場で西洋ニンジンの横に普通に並ぶようになるまで、紅天神の知名度を上げるのが目標。ジュースを足掛かりに事業を成功させ、後継者不足という課題解決につなげていきたい」と話した。
 食べられるのに廃棄されている食品は年間612万トン(17年度農林水産省・環境省推計)で、本県の規格外品や外食産業における食べ残しなどの事業系食品ロスは2万1637トン(19年度)と推計される。市では農業者などを対象にした「農業・農村活性化支援事業」として、これまでにミニトマトを使った菓子の商品開発など、規格外を活用する取り組みを支援。市農業振興課の水田昌浩課長は「規格外で出荷できない農産物を少しでも有効活用しようとする農業者の自主的な活動を、今後も積極的に支援していきたい」と話した。

独自にブランド化したニンジン「紅天神」のジュースを製造販売する滝社長=諫早市、滝商店

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