諫干請求異議訴訟 差し戻し審進行協議 国、開門派双方の「考え方」への見解まとめ

国、開門派双方の見解、主張

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防開門確定判決を巡る請求異議訴訟差し戻し審は、福岡高裁(岩木宰裁判長)で進行協議が続いている。同高裁は4月、国と開門派双方に「和解協議に関する考え方」を書面で示し、前提条件なしの和解協議の場を設けることを提示。国に主体的、積極的関与を強く促した。これに対し、国は判決言い渡しを求める意見書を提出するなど歩み寄る気配はない。「考え方」への国、開門派の受け止め、主張をまとめた。

■ テーブル

 「本件請求を統一的、総合的かつ抜本的に解決するためには、話し合いのほかに方法はない」「国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責を有する控訴人(国)の、これまで以上の尽力が不可欠」-。堤防閉め切りから24年、有明海の漁業不振と同事業の因果関係を訴える漁業者らが工事差し止めを求めた訴訟を佐賀地裁(2010年の開門確定判決の第一審)に起こして18年以上が経過する中、A4判3枚の「考え方」には事態打開への強い姿勢がにじんでいた。
 開門、非開門のいずれも前提条件にしていない。差し戻し前の請求異議訴訟では和解勧告が3回出されたが、いずれも不調に終わった経緯があり、対立する両者をまずは話し合いのテーブルに着かせたいとの意図が読み取れる。

■ 強硬姿勢

 「解決への最後のチャンス」。開門派が「考え方」をこう高く評価するのとは対照的に、国は「開門の余地を残した和解協議の席には着けない」と拒否する意見書を提出。開門派が提案した具体的な和解協議の進め方への見解を同高裁が求めたのに対しては、今月10日付意見書で「回答の必要を認めない」とするなど強硬姿勢を明確にする。
 「開門は地元利害関係者や開門差し止め確定判決(19年)の勝訴原告に受け入れられない」「諫早湾内では堤防閉め切り後の漁場環境を前提にカキ、アサリの養殖が盛んになっている。開門すれば養殖に影響し、新たな紛争を引き起こす」-。開門の選択肢を取ることが「事実上不可能」とする国の主張はこうだ。
 前回進行協議(8月18日)後の農水省の会見。担当者は、開門せず、諫早湾を含む有明海の再生に向けた基金で和解を目指すことが「最良の方策との考えに変わりない」「非開門を前提とした和解協議なら真摯(しんし)に検討する用意がある」との考えを重ねて示した。

■ 試行錯誤

 対する開門派は真っ向からこれに反論、話し合いに応じるよう求めている。
 開門の選択肢が取れない、との国の主張には、上申書で「最終的には(開門、非開門の)いずれかで合意されることになるが、重要なことは、その過程や合意内容において各当事者・利害関係人の利害が適正に議論、評価され、納得しうるような協議が十分に尽くされるかどうか」だと指摘。開門に伴う被害発生防止の事前対策工事で開門派、開門阻止派の利害調整は十分に可能だとし、「何らの工夫も試行錯誤の努力もしないまま、不可能と決めつけるものにすぎない」と批判した。馬奈木昭雄弁護団長は国は進行協議で議論を避けているとして、「裁判所は議論する場。意見を一切言わない国の態度はおかしい」と切り捨てる。
 同高裁は「考え方」に基づく進行協議期日を12月1日まで計6回設定し、4回目は今月22日に予定。国が協議打ち切りを求める中、裁判所側の訴訟指揮も大きな焦点となっている。


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