古賀人形

 長崎市東部の古賀地区に伝わる伝統工芸品「古賀人形」の工房を訪ねた。創業は400年余り前の文禄年間。京都・伏見人形、宮城・堤人形と並ぶ日本三大土人形とも言われる▲旧長崎街道沿いにある巨大な藤棚が目印。継承者の小川憲一さん(59)は19代目にあたる。昔は親類筋3軒で制作に励んでいた時期もあったらしいが、戦後は小川家のみになったそうだ▲古賀人形の大きな魅力は異国情緒。大小約90種の中にはオランダ人や中国人をモデルにした色彩豊かなものや、マリア観音といった宗教的な作品もある。筆で一体一体描くため、顔の表情が先代と違うのも特長の一つ▲出島、唐人屋敷、キリシタン…、長崎の奥深い歴史を凝縮したような人形の数々は、宿場町古賀を行き交う旅人たちの土産物として重宝されたことだろう▲「ここ数年は注文数が減り、人形だけで食える時代ではなくなった」と小川さん。会社勤めのおいが「作りたい」と志願しているが、職人として一人前になるには毎日修業しても10年かかるという。次世代への継承は容易ではない▲この夏、浦上キリシタン資料館(長崎市平和町)が全作品を集めた常設展示を始め、有志による「愛する会」も発足した。伝統工芸の魅力を再認識し、応援していく新たな試みにも目を向けていきたい。(真)

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