衆院選 自民、加藤氏の後任候補巡り 長崎2区と3区で駆け引き 区割り改定見越し

自民党県連の常任総務会で父加藤寛治氏の後任に決定し、あいさつする竜祥氏。後方右から大村市区選出の松本洋介県議と谷川氏=12日、長崎市元船町の平安閣サンプリエール

 今秋の衆院選長崎2区で不出馬を表明した自民党現職の加藤寛治氏(75)=3期目=の後任候補に、加藤氏の秘書で長男の竜祥氏(41)が決まった。そこに至るまでには、来年以降の衆院選での区割り改定を見越した上での、2区と3区両陣営の駆け引きがあった。
 「現職優先とは言わない。選挙区の対等合併なんだから。合区の時にまた話し合うと同意したということでいいですね? ではそのようにします」
 今月5日、長崎市内であった党県連の選挙対策委員会(選対)。委員長の谷川弥一衆院議員(80)=長崎3区、6期目=の最後の発言に、議論の本質が凝縮されていた。
 合区は「1票の格差」是正に向けた措置。県内4選挙区は人口に応じ区割りが改定される見通しで、早ければ来年にも1減の3選挙区となる。長崎、佐世保両市をそれぞれ中心とした選挙区と、現在の2区(諫早市、島原半島など)と3区(大村市、離島など)を合わせた選挙区に再編されると想定されている。
 高齢の加藤氏が衆院選を前に竜祥氏に地盤を譲る可能性は以前からささやかれていた。党の「現職優先」の原則を念頭に、今回の選挙で竜祥氏が当選すれば、3区の谷川氏が次回新人を後継に立てても、新しい選挙区では竜祥氏が公認争いで有利になる-とのシナリオだ。
 加藤氏はこの見立てを否定し、突然の不出馬表明はあくまでも「健康上の理由」と強調する。だが加藤氏の支持者は県連の公募方針に異を唱え、なりふり構わず「話し合い」で竜祥氏に決めるよう要求。古川隆三郎島原市長が会長を務める農業関連の公法人「県土地改良事業団体連合会」も県連に竜祥氏を推す文書を提出。「公益性の高い団体が政治活動をしている」と批判の声が上がり、国が指導する事態となった。
 この背景には、2区内の自民県議10人のうち、谷川氏に近い雲仙市区選出の宅島寿一氏(51)が公募に意欲を示したことがあったとみられる。地元関係者が中心となる選考委員会を設けず、選対で意向調査(投票)をした場合、「宅島氏が勝つ可能性があった」(複数の県議)。だが宅島氏の支援者の間では、島原半島内で加藤氏側との対決を回避したい空気もあった。
 そんな状況で迎えた5日の選対では2区候補の選定に際し、大村市区選出県議などから「3区内の声も反映させてほしい」といった意見が複数上がった。だが区割りの線引きが未定として受け入れられず、2区関係者が中心の選考委を設置することになり、竜祥氏が選出される可能性が高まった。一方、区割り改定後の公認候補選定は「現職に固執せず協議することを谷川委員長が取りまとめた」(山本啓介県連幹事長)ことで、宅島氏や3区側が「取りあえず納得する形になった」(選対関係者)という。だが、2区内のある県議は「県内では合区した時に改めて協議しようとなったが、党本部に現職優先の原則はある」と異なる認識を示し、火種は残ったままだ。

 自民は1区でも現職が不出馬を表明し、公募で選ばれた新人の初村滝一郎氏(42)が立候補を予定。4区では現職の北村誠吾氏(74)=7期目=に前県議会議長の瀬川光之氏(59)が公認争いを挑んでおり、今週末の選対で決着が図られる見通しだ。
 12日の選考委冒頭、谷川氏は選対委員長としてあいさつした。「県連として1区、2区、4区と立て続けにこうした会合を持ったことはあまり記憶にない。歴史の大きな流れが長崎に来ているのかなあという思いもある」

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