全国高校野球長崎大会 総評 粘り強かった長崎商 2年ぶりの甲子園予選

5年ぶり8度目の甲子園出場を決め、喜びを爆発させる長崎商の選手たち=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 第103回全国高校野球選手権長崎大会は27日、長崎商の5年ぶり8度目の優勝で幕を閉じた。コロナ禍で辞退校が出る県もあった中、まずは無事に全日程を終えた52チームや審判員、学校関係者たちに敬意を表したい。終盤に試合がひっくり返った第1、2シードの大崎、長崎商の決勝をはじめ、記録にも記憶にも残るドラマが例年以上に目立った夏。2年ぶりの甲子園予選を総括する。

■ 堅守の重要性

 長崎商は3回戦から決勝まで全て1、2点差を制した。サヨナラ二つを含む逆転4試合の粘り腰は見事だった。原動力は計44回無失策の堅守。ダブルエースの城戸、田村の両右腕の継投を中心に、与四球や捕球、送球ミスが少なく「自ら崩れなければ好機は訪れる」ことを体現した。
 前回優勝した2016年はチーム打率2割2分5厘。例年どちらかといえば“守りの長商”の印象がある中、今季は攻撃の層も厚かった。横田、大町、大坪が軸の打線を各試合で微修正し、途中出場選手を含めて日替わりヒーローが誕生。激しい部内競争の成果を示すと同時に、野球という競技の醍醐味(だいごみ)でもある「打順の巡り合わせ」も味方につけていた。
 春夏連続甲子園を狙った準優勝の大崎は、決勝で1点リードの九回2死無走者から敗れた。「あとアウト一つ」の重要性と怖さを知った。それでも3回戦は九回逆転で創成館を破り、準決勝は坂本と調のバッテリーを要に強打の海星を撃破。その心技体は紛れもなく第1シードで、部員不足からここ数年で急速に再起したチームは他校の脅威となり続けるだろう。

■ 強いリーダー

 4強は海星と小浜。海星は初戦から難敵続きの4試合で13盗塁の走力、各打者の反応の良さなど今年も県内随一の攻撃力を発揮。向井と宮原の140キロ右腕や主砲森ら主力が残る新チームは、悔しさをバネに、さらなる強さが期待できる。
 小浜は1年生を迎えるまで選手16人。33年ぶりの頂点は逃したが、春、NHK杯準Vに続いて地域に夢を与えた。中でもエース中野は、2回戦で無安打無得点試合を達成した力だけではなく、精神力、キャプテンシーが素晴らしかった。「強いチームには強いリーダーがいる」。それをあらためて教えてくれた。
 準々決勝に残ったのは鹿町工、壱岐、長崎西、諫早農。4強を合わせて8校中7校が公立校だった。第4シード長崎日大に完封勝ちした壱岐をはじめ、鹿町工と延長十一回の熱戦を演じた五島、プロ入りした酒井圭一(1976年・海星)と中村稔弥(2014年・清峰)の2人に続く史上3人目の1試合18奪三振を記録した立石の上五島など離島勢も活躍した。

■ 観客いてこそ

 大会はおおむね予定通り進んだ。3回戦後は中3日、準決勝と決勝も中1日ずつ休養を挟み、余裕のある日程のおかげで全力を出せた。一方で連日、選手の脚がつって試合が中断。展開を左右する場面もあった。日々の練習を含めて酷暑対策は引き続き不可欠だ。
 久しぶりの観客動員で球場はにぎわった。太鼓やメガホンをたたく大応援、全校生徒の惜しみない拍手は、各チームを強く後押しした。「頑張れ!」と思わず叫んだり、ひいきのチームが負けて泣いたりする子どもがいた。目をつむり手を握り締めて祈る母親もいた。
 各種大会開催の在り方は今も賛否がある。今後も感染症対策を第一に知恵を絞り続けることになるが、今大会が「スポーツは見る者がいてこそ」だということを再認識させてくれた。
 8月9日に甲子園が開幕する。19年は海星が3回戦まで進み、秋の国体で準優勝。昨秋は大崎が九州大会を制した。着実に県勢のレベルは上がっている。その代表という誇りと自信、ライバルや昨年大会を失った先輩らの思いを胸に挑む長崎商の活躍を心から願う。


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