長崎の離島路線維持へ 航空会社ORC創立60周年 旅客数の回復図る

創立60周年を迎えたORCの本社=大村市

 長崎県内の離島と本土などを結ぶ7路線を運航するオリエンタルエアブリッジ(ORC、大村市)が今月、創立60周年を迎えた。離島路線の維持に向け、運用限界を迎えつつある機体の更新や新たな共同運航を目指すほか、アフターコロナを見据え、新型コロナウイルス禍で20万人以上落ち込んだ旅客数の回復を図る。
 同社は1961年設立の第三セクター長崎航空が前身。ボンバルディア機「DHC-8-200」(Q200、乗客定員39人)導入を機に、2001年に現在の社名に変更した。大村と五島、対馬、壱岐をそれぞれ結ぶ路線のほか、福岡と五島、対馬、宮崎、小松(石川県)をそれぞれ結び、県防災ヘリの運航も担っている。
 課題となっているのが機体の更新だ。19年度は老朽化による不具合で欠航が相次いだ。さらに、整備規定に従わず業務を行ったとして、国土交通省大阪航空局から業務改善勧告も受けている。
 こうした状況を受け、整備業務の見直しや「安全推進室」の新設などに着手。昨年12月には、カナダから購入したQ200の中古機1機を導入した。現在3機を保有し、全日本空輸からのリース機「DHC-8-400」(乗客定員74人)も合わせ計6機(予備機を含む)体制で運航。「一時期と比べ機材トラブルによる欠航は減っている」(同社)。
 23年度には新機体を導入して更新。離島航路で就航させる計画で、本年度から乗務員らの養成を始めたい考えだ。
 新型コロナの感染拡大で旅客数は大幅に落ち込んだ。感染拡大前の19年度の同社運航便の旅客数は約52万3千人。20年度は約31万1千人と20万人以上落ち込み、利用率も平均で50%を切った。コロナ禍でも最低限の離島便は維持しているが「乗客が1桁台という便もあった」(同社)。
 こうした中、今年3月に始まった県内宿泊料金割引キャンペーン「ふるさとで“心呼吸”の旅」では離島を旅先に選ぶ人も多く、離島便の予約も急増。感染急拡大で同キャンペーンは一時停止されているが7月1日から再開予定だ。同社は「『県内でもいいから旅行に行きたい』という需要は一定ある。こうした旅行客をいかに取り込めるかが短期的な課題」とする。
 さらにORCなど九州の地域航空3社と全日空、日本航空は来年10月から、離島などを結ぶ便で共同運航の開始を目指しており、利用客の拡大や経営改善につながると期待。今後も共同運航を増やすと同時に、離島留学やUIターンなど県施策と連動した取り組みにも力を入れたいとしている。
 ORCの日野昭社長は取材に「コロナが収束して人の動きが活発になった際、しっかりPRしていけるよう準備を進めていく。今後も離島の発展や交流人口拡大の手段として、しっかり路線を維持していきたい」と述べた。

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