第73回長崎県高総体 総評 “待望の舞台”で躍動 悲願の初V相次ぐ

団体、総合上位入賞校

 2年ぶりに開催された第73回長崎県高校総合体育大会は11日、32競技(駅伝は実施日未定)の全日程を終えた。コロナ禍で中止となった昨年の悔しさを乗り越え、ようやく立った“待望の舞台”。先輩たちの思いも背負って、約1万人の高校生アスリートが躍動した。悲願の初V、盤石の連覇、古豪復活、ライバル対決…。見どころにあふれた7日間を振り返る。
(団体、個人の連覇記録などは第71回から引き継ぎます)

 団体や総合優勝校が手にする男女計55本の優勝旗(参加1校の競技はなし)は27校が獲得。このうち、鎮西学院が最多の5本を勝ち取り、長崎南山が4本で続いた。長崎日大、大村、大村工、諫早農、長崎北陽台、瓊浦、諫早商の7校はそれぞれ3本を手にした。

◆勢力図に変化

 初優勝チームは4競技の5種別(今年加わった重量挙げ女子を含む)で誕生。大会前の予想を覆しての勝利など、それぞれが鮮烈なインパクトを残した。
 バレーボール男子の鎮西学院は準々決勝で10連覇中の大村工を破り、決勝は今季2冠の佐世保南に競り勝った。鎮西学院はバスケットボール女子も初制覇。卓球男女団体、サッカー女子と合わせて、前回の優勝旗2本から大きく躍進した。
 ハンドボールの男子の長崎工は、1982年から頂点に立ち続けた瓊浦、長崎日大の“2強時代”に終止符を打った。女子の瓊浦も昨秋の県新人大会2位の悔しさをばねに、初めて夏の全国切符をつかんだ。
 今季はコロナの影響で部活動が制限された。ある競技の有力校の監督が「試合経験の不足など、強化が例年通りにいかなかった」と心配していたように、それが勢力図を塗り替える一つの要因となったとも考えられる。そうした中、悲願を成し遂げた各校は、高い目標を掲げて地道に努力を続け、試合を重ねる中で選手たちが成長する高校スポーツの醍醐味(だいごみ)を体現したと言えるだろう。
 連覇は全体の約半分となる27。前回の37から約2割減ったが、V25を達成した相撲の諫早農をはじめ、今春の全国選抜大会で8強入りしたバドミントン男子団体の瓊浦、ソフトボール男子の大村工などが高い総合力を披露。V7を果たした柔道男子の長崎日大も印象深かった。
 弓道の女子団体の対馬は32大会ぶりに王座へ返り咲き。コロナ禍で島外へ出られないというハンディがある中、リモート記録会などで磨いた実戦感覚を発揮した。今季の県内主要4タイトルを史上初めて独占した男子団体の長崎南山も夏の県制覇は29大会ぶり。ソフトボール女子の長崎商は九州文化学園の連覇記録を「17」で止めた。
 ライバル対決も注目された。競泳男子自由形の森山遼(長崎南山)と竹野友貴(瓊浦)は、100メートル決勝でともに県高校新をマーク。陸上女子400メートル決勝も小鉢ひなた(諫早)、渡邊陽(長崎南)が大会記録をともに塗り替える好レースとなり、さらなる飛躍を予感させた。

悲願の初優勝を果たしたバレーボール男子の鎮西学院。エース梅本(右)らが原動力となった=島原市、島原復興アリーナ

◆ウィズコロナ

 学校で発生したクラスターの影響などで棄権するチームが出たのは残念だった。目に見えないウイルスとの厳しい戦い。試合直前で出場を諦めざるを得なかった選手たちの心情を思えば、かける言葉が見つからない。
 それでも、各競技とも中止は避けられた。審判を減らすため選手自身がイン、アウトを決める「セルフジャッジ」を導入したテニスなど、各競技で運営を工夫。大会をやり遂げたいと願う関係者の熱意、努力に敬意を表さずにはいられない。
 「ウィズコロナ」の時代。保護者さえ観戦できない中、多くの競技でテレビ局と連携するなどしてライブ配信が行われ、長崎新聞社もツイッターなどを活用して速報に注力した。こうした取り組みは来年以降、新たなスタンダードになっていくのかもしれない。


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