対馬市議選終盤情勢 厳原と上県、激戦の様相 コロナで街宣中心

定数19に対し、23人が立候補した対馬市議選のポスター掲示板=同市厳原町

 9日に告示された対馬市議選は、16日の投開票に向け終盤戦に入った。定数19に対して23人(現職14、新人・元職9)が立候補。市中心部の厳原町は候補が乱立、北部の上県町は新人や元職がしのぎを削り、激戦の様相だ。各候補は新型コロナウイルス拡大を受け、有権者と距離を取れる選挙カーでの街宣に注力。ただ、各候補の主張はほぼ横並びで具体的な訴えは乏しく、論戦はいまひとつ盛り上がりに欠ける。
 対馬市では4月、複数のスナックでクラスター(感染者集団)が発生するなどし、計16人の陽性が確認された。感染を心配する市民感情に配慮し、有権者との握手や街頭演説を避ける候補が大半。動画投稿サイトで政策を訴える候補もいるが、多くが選挙カーで名前を連呼するスタイルだ。
 こうした中、投票率は低下が懸念される。感染防止のため外出を控える人が増えることで、過去最低となった前回の79.86%と比べて75%前後にまで下がるとの予想が少なくない。前回の最下位当選者の得票数は644票。投票率の低下に伴い、今回の当選ラインは「500台にまで下がる可能性は十分にある」と複数の陣営がみている。
 立候補者の旧町別は、厳原9、美津島5、豊玉2、峰1、上県3、上対馬3。官公庁や企業、スーパーが集中する大票田の厳原町には、浮動票を狙って連日のように他地区の選挙カーが乗り入れる。同町の新人陣営幹部は「どうしても票を食われて苦戦するのは厳原だ」と嘆く。
 上県町からは前回、2人が出馬し、計約1700票を得た。当選した現職1人が引退し、今回は元職・新人3人で争う。候補の1人は「地元だけでは票が足りない。全島をくまなく回る」と鼻息が荒い。こうした状況を他地区の現職陣営も警戒する。
 一方、ある候補が「選挙前から結果は9割方決まっている」と話すように、今回も地縁血縁に物を言わせる従来型の選挙スタイルは変わりない。市が抱える人口減少や経済の低迷などの課題に切り込む候補は少なく、選挙ポスターを眺めていた80代女性は困惑した様子で語った。「どれも似たりよったり。皆投票をお願いしますと言うばかりで、誰に入れればいいか分からない」
 選挙人名簿登録者数は2万5320人(男1万2440、女1万2880)=3月1日現在、市選管調べ=。

 


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