理由は三つ?

 「私はアスリートですし、ずっと待ち望んでいた大会。しかし、人々を危険にさらすのであれば、今すぐ議論すべき」はテニスの大坂なおみ選手。錦織圭選手は「(五輪は)死人が出てまで行われることではない」と語った▲おそらく選手たちは、夢の舞台を心待ちにしているはず、と考えるからかもしれない。アスリート発の“五輪懐疑論”がこのところ立て続けに報じられている▲陸上の五輪テスト大会に出場した新谷仁美選手は5000メートルのレース後に取材に応じた。「反対意見も無視できない」「スポーツで世界が救えるのなら、もうとっくに救えている」「人としては今年の五輪開催には反対、アスリートとしては分からない。悩んでいる」。取材対応は16分間に及んだそうだ▲質問から逃げず、慎重に言葉を選んで語る姿に頭が下がる。ただ、五輪をこのまま開催するか、別の決断をするか、決めるのは別の人の仕事だ。競技者たちを不必要に矢面に立たせるのはおかしい▲外信面に記事がある。ニューヨークタイムズに五輪の中止を主張する寄稿が載ったそうだ。〈五輪開催に強引に突き進む理由は三つ。カネ、カネ、そしてカネだ〉▲外国の人って時々こういう意地悪な言い方する…の感想は別として、これに反論するのも誰かの役目なのだろうが。(智)


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