障害者の可能性や個性を発信 長崎の社会福祉法人 アトリエ、カフェ新設

10日にオープン予定のカフェ「Hi-ho!」。利用者らが調理や接客を担当し、隣接するアトリエ「Wonder-ho!」で制作されたアート作品なども販売する=長崎市戸石町

 長崎市の東長崎地区で障害福祉サービスを手掛ける社会福祉法人「遊歩の会」は先月、利用者が芸術活動に打ち込むアトリエと、接客や調理を担うカフェを新設した。障害の特性や得意不得意に応じ、活動内容を選べるようにするためだ。橋口幸恵理事長(50)は「利用者の可能性や個性を社会に発信したい。障害がある人もない人も共に理解し合える場所に」と願う。

  ■創作楽しむ
 同市戸石町の国道251号沿い。オープンしたばかりのアトリエ「Wonder-ho!」を訪ねた。黄色い壁の明るい室内で、数人の利用者が思い思いのペースで折り紙や絵画を制作している。生み出された作品は生活雑貨などのデザインとなり、隣り合うカフェ「Hi-ho!」で売る。いずれは原画も展示、販売する予定だ。
 車いすの上でパソコン画面と向き合う女性がいた。小野帆乃夏さん(19)。手脚を動かすことや発声が困難だが、目は自由に動く。パソコンのセンサーに目の動きを感知させてクリック操作などをする「視線入力」を使いこなし、絵画ソフトで絵を描いている。
 画面上での会話も自在。絵のテーマは「きめつ(鬼滅の刃)とか、四季のイメージを描いています」。四角や丸などの図形を複雑に配置し、題材から連想した色を塗っていく手法だ。アート活動に対する思いを尋ねると「(作品として)うれるかな?とおもっています笑」と返してくれた。創作を楽しみ、生きがいの一つとなっている。

目の動きでパソコンを操作する「視線入力」ソフトを使い、絵を描く小野さん(画面内は拡大した作品)。図形を複雑に組み合わせて色を付け、アニメキャラクターや四季のイメージを表現する=長崎市戸石町

  ■選択肢広く
 遊歩の会は現在、障害者らが働く「就労継続支援B型事業所」や軽作業などが中心の「生活介護事業所」、障害のある子らの預かり支援をする「放課後等デイサービス施設」などを運営している。
 本年度から新たに、アトリエを生活介護事業所、カフェをB型事業所として開設(いずれも定員10人)。同法人の三浦宏理事(48)によると「利用者それぞれの障害特性に応じたサービス提供が長年の課題」。今回の事業所新設で働き方の選択肢を広げるとともに、創作活動や接客を通した社会参加も目指す。三浦理事は「活動を認めてもらうには時間がかかるが、まずは知ってもらうことから始めたい」と話す。
 アトリエでは絵画や陶芸、写真撮影など自由に芸術活動に取り組み、作品はトートバッグやマグカップ、カードケースなどのデザインとして商品化。利用者には売り上げの一部からデザイン料を支払う。アート活動に特化した事業所は市内では珍しく、利用者を募っている。
 カフェは10日にオープン予定。日中に食事や飲み物、デザートを提供し、法人内の他の事業所の昼食作りも担う。将来的には弁当販売も検討している。アトリエで作られた作品の他、地域のハンドメード作家らから作品の委託販売も受ける。


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