西海市のこれから 杉澤市政2期目へ(下) 脱炭素社会のまちづくり 未来像 丁寧な説明必要

高効率化が発表された松島火力発電所(左)と洋上風力発電の「有望区域」に選定された江島沖(右端の海域)=西海市大瀬戸町、紫雲山から撮影

 「日本で初めて海外石炭を使った松島を、よみがえらせたい」。16日夕、電源開発(Jパワー)は長崎県西海市大瀬戸町の松島火力発電所2号機に二酸化炭素(CO2)排出を抑えた、最新鋭のガス化設備を追加する改良計画を発表した。2024年に着工し、26年度の運転開始を目指す。
 昨年7月、政府はCO2排出量が多い非効率な石炭火力発電所を30年度までに削減する方針を表明。稼働から40年たつ松島については10月末、同社が休廃止や更新の対象になり得るとの見解を示し、住民は先行きを案じていた。
 大瀬戸から船で約10分の松島は人口約430人。島内外の最大で千人が発電所で働く。島内に住むグループ・協力会社の従業員が消防団を支え、祭りやペーロン大会に参加している。自営業の男性(71)は発電所について「松島に無くてはならない存在。存続となって本当によかった」と語り、発表に胸をなで下ろした。
 休廃止対象の見解を受け、県と西海市は政府が掲げる50年までの脱炭素社会実現へ向け、洋上風力発電の推進と併せ、国や同社に松島火力の高効率化を要望した。杉澤泰彦市長は選挙戦でも、三つの柱からなる「脱炭素社会のまちづくり」を公約とし、その一つが「前進」した格好だ。選挙期間中の発表に「タイミングがいい」と話す有権者も少なくなかった。
 「脱炭素」の2点目は国が進める洋上風力発電の誘致。同市の江島沖は昨年7月、五島市沖に続き県内2件目の有望区域に選定された。今月23日には洋上風力の整備を本格化させる「促進区域」指定に向け、法律に基づく協議会の初会合が西海市内で開かれる。指定されれば、国による事業者公募が始まる。
 3点目は、市面積の55%を占める森林を生かす「緑の産業」。前者と比べ市独自事業の色合いが強い。雑木や端材を燃料として使う「木質バイオマス」の普及や、市内産ヒノキを使ったタイニーハウス(小屋)の開発などを盛り込んだ森林資源の活用策を近く公表する。
 松島火力の高効率化は、雇用や経済など市民生活に直結した内容だけに地元の大瀬戸町を中心に、市民の関心は高かった。一方で「脱炭素社会」という言葉は浸透しておらず、「よく分からない」「難しい」と話す有権者も。市の未来像を示す重点政策だけに、事業推進に向け市民の理解を得る努力も求められる。杉澤市長が掲げる「市民目線」による丁寧な説明の試金石となりそうだ。


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