選抜初の3位に貢献 長崎商コーチ服部浩兄弟 偶然の出会いと恩返しの気持ち

「長崎のソフトボール界に少しでも恩返しを」と長崎商高でコーチを務める服部和浩(左)、光浩兄弟=長崎市、長崎商高ソフトボール場

 全国高校女子選抜ソフトボール大会(3月20~24日・栃木)で初の3位入賞を果たした長崎商には、選手たちを縁の下で支え続ける2人の功労者がいる。日本代表歴もある監督の溝口弘一郎(43)と協力して、仕事後に毎日チームを指導する外部コーチの服部和浩(54)と光浩(52)の兄弟だ。福岡生まれ、大阪育ちの2人を長崎に導いたのは、30年以上前の出合いと縁。今、仲間やソフトボール界への恩返しを胸に汗を流している。

■ ちゃんぽん
 2人は大阪の元球児。弟の光浩が高校を卒業した年、日本一周旅行をしようと初めて長崎を訪れ、ちゃんぽんなどの食に魅了された。「“1カ月いてみよう”が1年になり、そうなれば働かないといけない。就職して先輩にソフトに誘われた。それが始まり。もし最初に北から旅して札幌ラーメンを食べていたら、こんな人生ではなかったかもしれない」と笑う。
 早くに両親を亡くし、兄弟の絆は自然と強まった。その後、兄の和浩も社会人野球を終えて長崎へ。弟と同じ職場、同じチームに入った。
 以降、仲間とともに長崎がソフトボール強豪県になるまでの礎を築いた。国内最高峰の日本リーグに加盟しているクラブチームNeo長崎の前身、長崎SCも創設期から支えた。今では高校の指導者として日本一になった大村工高監督の山口義男(46)、佐世保西高監督の津本大貴(39)らとも一緒にプレーした。溝口もその一人だった。
 1993年にそろって長崎市役所へ転職した兄弟は、互いに家庭を築いた後も「気付けば職場かグラウンドばかりの生活だった」(光浩)。現役や子育てに一区切りついてもそれが変わることはなく「(ゆっくりとした日々を)家族は諦めている」(和浩)。ふらっと練習に立ち寄った長崎商で約3年前に和浩が、その1年後に光浩がコーチになった。

■ 夏の頂点へ
 「知らぬ間にコーチになっていた。引き受けた記憶もない。僕が教えても何の役にも立たない」(光浩)。「自分が指導をさせてもらいに来ているだけ。チームに感謝」(和浩)。そう2人は謙遜する。だが、根底には「かつてバリバリの若手だったミゾ(溝口)が、今は立派に子どもたちを教えている。そりゃ手伝えることがあれば応援したい」という思いがある。
 そんな兄弟に溝口も全幅の信頼を置く。「和さんは守備のスペシャリスト。光さんは打撃。2人とも選手の心境に寄り添いながら、居残り練習にも付き合ってくれる」。過去最高成績を残した全国選抜大会も同行。教え子と一緒に喜びを分かち合った。
 一方で課題も冷静に見つめる。春は3大会連続で全国切符をつかんだチームだが、県高総体は九州文化学園が17連覇中と苦杯をなめ続けている。ライバルたちとのハイレベルな県大会を制し、次は夏のインターハイでの飛躍を誓う。光浩は「高校生は自信と過信がごっちゃになる時期。春は春として、しっかり仕切り直していきたい」と気を引き締めている。
 和浩もその目標を共有した上で、こう強調する。
 「恩返し」
 新たな縁をくれた長崎商が今は第一だが、見ず知らずの自分たちを受け入れ、すっかり「長崎のおじさん」に成長させてくれた仲間とこの地に-。(敬称略)

3月の全国高校選抜大会で3位入賞した長崎商高女子ソフトボール部=栃木県大田原市美原運動公園野球場

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