佐世保の「大噴水」撤去へ 中央公園 来春リニューアル

来年3月までに撤去される中央公園の「大噴水」。噴水は故障しているが憩いの広場として市民に親しまれている=佐世保市祇園町

 長崎県佐世保市は名切地区の中央公園のリニューアルに合わせ、園内の「大噴水」を来年3月までに撤去する。維持管理費の削減が主な理由だが、公園を象徴する存在にもなっており、市民からは惜しむ声もある。高度経済成長期以降、憩いの施設として自治体が管理する噴水は増加していたが、最近は経費節減のため全国的に減少傾向にあるようだ。
 佐世保市中心部のアーケードの近隣に位置する中央公園。その一角に、市制施行70周年を記念し、1972年に設置された噴水がある。直径約20メートルの円形。故障中で水は出ないが、周囲では市民が散歩をしたり、ベンチで本を読んだりする姿が見られ「噴水広場」の通称で親しまれている。
 市はにぎわいを創出するため、中央公園の敷地13.7ヘクタールのうち、5.4ヘクタールを改修する事業に着手。民間事業者が屋内遊び場やカフェ、キャンプ場などを整備運営する公園として来年4月にリニューアルオープンする。
 噴水広場は市が管理を継続する。市内の都市公園にある唯一の噴水だが、度々故障しており、市は修理や維持管理に多額の経費がかかると判断。年度内に撤去し、跡地を舗装すると決めた。
 噴水は故障する以前は、夏休みや大型連休、イベントなどに合わせて稼働していた。最後に水を出したのは、2015年秋のよさこいイベント「YOSAKOIさせぼ祭り」。中央公園は祭りのメイン会場で噴水広場は踊り子たちの休憩や記念撮影の場所となっている。当時の実行委員長、川尻章稔さん(64)は「時代の流れで撤去は仕方がないが、噴水は心が豊かになる憩いの場所。なくなるのは寂しい」とつぶやく。
 県内では、同市のほかに、県や長崎、諫早、大村、南島原各市の都市公園でも噴水が計9基設置されている。このうち、長崎市には計5基あり、長崎公園の装飾噴水は日本最古とされるほか、平和公園の「平和の泉」は、水を求めて死んでいった被爆者を慰霊している。市は「歴史や平和を考える大切な場所にもなっている」と存続の意義を強調する。
 噴水の施工会社などでつくる一般社団法人日本水景協会によると、国内の噴水設置は、高度経済成長期以降に自治体の発注が増加。しかし、行政もコストカットが求められるようになり、この10年間は特に減少し、廃止されるケースも目立つ。一方、テーマパークなど民間の集客施設での整備が多くなっているという。
 同協会で業務執行理事を務める宮川幸雄さん(69)は「時代とともにニーズは変化しているが、人々の心を癒やす水の景観はこれからも求められると思う」と話している。


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