「家族・交流証言者」調さんデビュー 被爆者・西山さんの体験受け継ぐ

被爆者の西山さんの体験を受け継ぎ、初めて講話に臨んだ調さん=長崎市、長崎原爆資料館

 高齢化する被爆者に代わって、家族や家族以外の希望者が体験を語り継ぐ「家族・交流証言者」事業で、平和団体「ピースバトン・ナガサキ」の代表、調仁美さん(59)=長崎市本尾町=が、福岡市の被爆者で漫画家の西山進さん(93)の体験を受け継ぎ、新たな証言者としてデビューした。
 西山さんは17歳の時、爆心地から約4キロの船の部品工場で被爆。翌日、救援隊として爆心地近くを通り、水を求めて浦上川に入り絶命した人々を目の当たりにした。その後、放射線の影響で体の不調が続いたが「周りの人には理解されず、医師も治療法が分からなかった」という。
 これまで地元福岡の小学生などに体験を語ってきたが、2016年に胃がんを患い、18年から歩くのが難しくなった。調さんは「私が(証言を)伝えることで西山さんが元気になってくれたら」と考え、体験の継承を申し出た。
 8日、長崎市平野町の長崎原爆資料館であった定期講話で、調さんは、西山さんが描いた被爆当時の絵をテレビ画面に映しながら「西山さんは93歳になっても、世界が平和であるように、漫画を通して訴え続けている。平和のために自分に何ができるか、考えてほしい」と語り掛けた。
 定期講話は月2回開催。「家族・交流証言者」は現在44人。

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