「精いっぱい楽しんで」 大崎野球部員らを見守り続ける田口さん

大崎の野球部員に漬物を振る舞う田口さん(中央)=2月、西海市の元気やさい雅(提供写真)

 住民と交流を重ねながら成長し、初めて甲子園の舞台に立つ大崎。地元西海市大島町の百合ケ岳(標高193メートル)への登山道近くで農園を営む田口昭子さん(84)も学校を支えてきた一人だ。山中で足腰を鍛える野球部員にまんじゅうや漬物を振る舞ってきた。「気持ちのいい子どもたち。精いっぱい楽しんできてほしい」と期待を寄せる。
 交流は大崎が九州大会1回戦で惜敗した2019年の秋、部員らが冬のトレーニングで使う登山道の清掃に訪れたのがきっかけ。「イモを焼いておくから帰りに寄らんね」。以来、農園の恒例行事になった。「おいしかった」「いつもありがとうございます」。部員らの礼儀正しく、人懐っこい笑顔がうれしかった。「食べっぷりもいいけど、配膳の手伝いも手際がいい」と目を細める。
 1999年の大島大橋開通後、田口さんは農園を営む仲間と、道路の清掃や美化など「道守活動」に取り組んできた。大崎高の生徒らも活動に協力しており、そのお礼も兼ねて18年前から、郷土料理を卒業間近の3年生と一緒に作る「ふるさと料理教室」を開催。20回目となる来年は「甲子園の思い出話ができれば」と願う。
 21日は仲間ら7人が農園に集まり、朝から勝利の“前祝い”の押しずしを作ったが、試合は順延に。田口さんらは作業に精を出しながら「次は何を食べさせてあげようか。私たちも頑張らんば」と、選手たちの晴れ舞台での活躍が待ち遠しそうだった。


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