諫早の未来 市長選政策を読む<4>交通弱者対策 大久保氏「実情応じた巡回バス」 山村氏「駅活用し地域ごとに」 宮本氏「高齢者への支援確立」

 

 激しい前哨戦が続いている諫早市長選で争点に浮上してきたのが、高齢者など交通弱者対策。現職の宮本明雄氏(72)、新人で元国土交通省職員の山村健志(つよし)氏(47)、同じく新人で元県議の大久保潔重(ゆきしげ)氏(54)の3氏とも公約に盛り込んだ。
 きっかけは、会員7千人を誇る市老人クラブ連合会(市老連)の交通問題アンケートと昨年9月の市議会で採択された高齢者の交通費助成を求める請願。
 近年、増加する高齢者の交通事故防止を目指し、運転免許証の返納が促されている。しかし、エリアが広く、山間部が多い同市の場合、通院や買い物などの日常生活に車が不可欠で、返納に二の足を踏む。
 市老連は2019年、会員の移動手段の現状と自家用車に代わる望ましい交通手段を問うアンケートを実施。4割近くが「身近で便利のいい移動手段があれば免許返納」と回答。市老連は昨年、「既存の路線バスを核として、合併旧5町や市周辺部の各地域内を巡回するミニバス運行」を求める要望書を市に提出した。
 これに対し、市は市内で鉄道、バスを運行する島原鉄道と県営バスに年間約2億~3億円を補助し、公共交通空白地域に乗り合いタクシーを運行している点への理解を求めた。市老連は自ら検討組織をつくり、各地域ごとに望ましい移動手段の提言づくりに入った。
 宮本氏が、今年になって公表した公約に「高齢者への交通支援策の確立」が盛り込まれた。交通事業者への補助を維持した上で、「難題だが、市全体の交通実態を解明し、幅広い世代の人と話し合う場をつくる」と方針転換の理由を語る。
 大久保氏の公約の一つは、市内各地域への巡回バス導入。その上で、島原鉄道や路線バス、新たに提案している巡回バスで網羅できる場所と、そうではない場所がある点を指摘。これでカバーできない場所に住む人へのタクシー利用助成を視野に入れる。「高齢者の移動手段確保は非常に大事。解決に力を注ぎたい」
 山村氏は、市内にある19の駅と市老連のアンケート結果に着目。「市域が広く、地域によって実態や悩みが違う。民間との連携やタクシー、バスの活用など、地域の実情に応じて、利用者とサービス事業者との話し合いをしながら解決したい」。対話を軸に「取りこぼしのない社会づくり」を急ぐ考えだ。
 市内の高齢化率は30%を超し、高齢者をはじめ、交通弱者の移動する権利がどう保障されるのか。具体的な道筋が問われる選挙戦でもある。


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