画家エル・グレコに魅せられ45年 模写作家 野田さんが個展 7日まで県美術館

エル・グレコの作品「復活」の模写の横に立つ野田さん=長崎市、県美術館

 スペイン絵画の巨匠エル・グレコ(1541~1614年)の作品を模写する長崎市の画家、野田みち子さん(71)の個展が、同市出島町の県美術館で開かれている。エル・グレコに夢中になって45年。模写や素描など計約40点が並ぶ。7日まで。無料。
 野田さんは同市出身。県立長崎西高から中央大に進学。卒業後、一時帰郷し、絵画を学ぶため渡仏。滞在中の1975年にスペインへ旅行した際、マドリードのプラド美術館でエル・グレコの作品と出合った。人物の表情や光と空間などの表現に感銘を受け「エル・グレコの作品を描きたい」との衝動に駆られたという。すぐにマドリードに拠点を移した。
 模写は、日本では技術習得目的との印象が強いが、スペインでは模写も芸術とされ、職業として成り立っている。そこで野田さんは、エル・グレコの絵画を30点以上所蔵するプラド美術館から作品を模写する許可を受け、同館公認の模写作家として活動。館内に展示されているエル・グレコらの作品の前にイーゼルを立て、より本物に近づけようと作品鑑賞や文献の研究を繰り返しながら「再創造」に没頭した。スペインで暮らした2010年までの約35年間で、エル・グレコの作品25点ほどを模写してきた。
 野田さんは、その後東京へ移住し、2年前に長崎に帰郷。地元での個展は約30年ぶり。会場には、エル・グレコの代表作「受胎告知」や「復活」などの模写(油彩)12点のほか、オリジナルの人物の素描約25点も並ぶ。野田さんは「エル・グレコをつかみたいとの思いで描いてきた作品。その思いや彼の精神が少しでも伝わればうれしい」と話している。

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