認知症の兆候をIoTで 長崎大が実証実験 高齢者の行動把握

ごみ箱のふたに設置したセンサーやスマートウオッチを使った実証実験=長崎市内

 高齢者の自宅での日常的な動作を冷蔵庫などに設置した超小型センサーや身に着けた腕時計型端末(スマートウオッチ)などから送信されるデータで解析し、離れて暮らす家族や介護関係者らが認知症の兆候を把握するシステムを、長崎大情報データ科学部と同大学病院脳神経内科の研究グループが開発した。1人暮らしの高齢者宅などでの活用が期待され、早ければ年内の実用化を目指している。
 研究グループによると、新型コロナウイルス禍の中、高齢者と接することなく、プライバシーにも配慮しながらIoT(モノのインターネット)などを使って生活機能障害を把握できるのが特長。協力会社社員の個人宅で今月末まで進めている実証実験では、薬箱、おぼん、カーテン、トイレのドアなど11カ所にセンサーを設置。データは人工知能(AI)が分析し、「服薬できたか」「入浴したか」などの日常行動を把握する。
 スマートウオッチでは歩行量や転倒の有無、会話量などを測定。冷蔵庫を開けた時に食事と関連付けて「昨日の夕食は何を食べたの?」などと音声で質問し、「ちゃんぽんを食べました」などの回答は、家族にLINE(ライン)で通知する。AIが認知症の兆候があると判断すると、アラームなどで高齢者本人や離れて暮らす家族、ケアマネジャーなどに伝える仕組みを想定している。
 実証実験はコロナが収束すれば高齢者施設などでも実施したい考え。ビッグデータを取り、実用化に向けた検証をしていく。
 同科学部の小林透教授は「コロナ禍の中で、接触せずに高齢者の日々の生活を優しく見守るシステム。認知症は早期に見つけ、治療を始めると症状を遅らせることができる。1人暮らしの高齢者宅や医師の少ない離島などで年内にも実用化したい」と話している。

© 株式会社長崎新聞社