国重要無形民俗文化財 「対馬の盆踊」指定へ ユネスコ遺産候補にも追加方針

娘が父の敵討ちのため武士に立ち向かう物語の仕組踊が含まれる三根上里の盆踊=対馬市峰町三根上里、阿弥陀院

 国の文化審議会は15日、長崎県対馬市内各地に伝わる「対馬の盆踊(ぼんおどり)」など、全国の民俗芸能や民俗技術の5件を重要無形民俗文化財に指定するよう萩生田光一文科相に答申した。年内にも指定される見通しで、指定されれば同市内では初となる。
 また、文化庁は同日、このうち対馬の盆踊など3件を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産候補「風流踊(ふりゅうおどり)」に追加する方針を明らかにした。風流踊には、これまでに本県の「平戸のジャンガラ」「大村の沖田踊・黒丸踊」など23都府県の37件が構成に含まれており、2022年の政府間委員会で無形文化遺産登録の可否が審議される予定。同庁は候補の追加について「今後、文化審議会に諮りたい」としている。
 対馬の盆踊を構成するのは対馬市峰町の三根上里(みねかみざと)と吉田、厳原町の阿連(あれ)と曲(まがり)の計4地区の盆踊。
 同市教委などによると、対馬の盆踊の成立は室町時代の念仏踊(ねんぶつおどり)にさかのぼるとされ、近世の歌舞伎の影響を受けた演目もあるなど重層的な内容となっている。男性が二列縦隊に並んで寺院や神社、初盆の家などで披露し、祖霊の依(よ)り代(しろ)とされる紙や布で装飾した笹竹「エヅリ」が掲げられる。
 三根上里では1960年ごろに途絶えていたが、89年に復活。扇子を手に舞う「祝言」、何も持たず踊る「手踊」、杖などの道具を持った「採り物踊」、演劇形式の「仕組踊」、やっこ振りや太鼓打ちが練り歩く「行列風流」、エヅリを川に流すなどの「エヅリ作法」-の現存する対馬の盆踊の全要素が残る。同地区には、娘が父の敵討ちのため武士に立ち向かう仕組踊など8演目が現在も踊られ、阿弥陀院で8月17日に奉納されている。
 吉田でも住民が92年に復活。祝言と手踊の4演目が伝承されており、普光寺と天諸羽(あめのもろは)神社で8月14日に奉納されている。
 一方、阿連では男性が少なかった戦時中も女性が参加するなどして絶えることなく伝わってきたとされる。父の敵として、息子が女盗賊を討つ仕組踊など計6演目が伝わっており、8月15日に延命寺で、16日には雷命(いかつみこと)神社で奉納されている。
 曲では戦時中に途絶えたが、戦後に再開された。祝言と採り物踊の計4演目が伝わっており、8月15日、地区内の墓所と初盆の家をまわって奉納している。
 4地区でつくる対馬盆踊保存連合会の永留安生代表(71)は「担い手が高齢化しているが、地域の伝統を今後も継承していきたい」と述べた。

© 株式会社長崎新聞社