<いまを生きる 長崎コロナ禍>ビートルズ伝説のライブ“再現” ライブレストラン店主・向井さん

 9月27日夕。長崎県佐世保市のビルの屋上に、誰もが聞き覚えのある懐かしいメロディが響いた。市内のアマチュアバンドが、ビートルズの伝説のライブを模して敢行したイベント。「新型コロナに負けず、音楽や演劇などの文化活動を盛り上げたい」。そんな熱い思いが込められていた。
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 同市島瀬町のビル屋上。市内で活動するビートルズのコピーバンドが「ワン・アフター・909」「ドント・レット・ミー・ダウン」「ゲット・バック」など約10曲を披露。「本家」と同様、警察官が現場にやって来る場面もあり、会場は盛り上がった。
 企画したのはビル2階のライブレストラン「プラトンの隠れ家」のマスター、向井博樹さん(65)。ビートルズが1969年1月、ロンドンのビルで予告なしで実行した伝説の屋上ライブ「ルーフトップコンサート」を再現した。数年前から温めていたアイデアだった。
 向井さんは同市出身。米海軍佐世保基地で30年間勤務し、59歳で早期退職。2015年から飲食店「ろじ庵」(島瀬町)の経営を始めた。「プラトンの隠れ家」はライブハウスだった前の店を引き継ぎ、18年10月にオープンさせた。
 「隠れ家」で毎週末ライブを開き、大勢の音楽ファンでにぎわった。しかし、新型コロナの影響で、状況は一変。今年3~6月のライブは全て中止に。先行きが不安になり、向井さんも大好きな音楽を心から楽しめなくなってしまった。
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 「生きていることが不思議だ。毎日を大事に楽しもう」。時間がたつにつれ、向井さんはそう強く思うようになった。同時に、他の人たちにも「もっと一日一日を楽しもう」とエールを送りたくなった。そこで思い付いたのが屋上ライブ。幸い、屋上であれば「3密」にならない。「やるなら今だ」と思った。
 湿りがちな人々の表情を明るくした屋上ライブ。向井さんはこれを皮切りに、コロナ対策をしながら店内でライブや演劇、朗読会など、さまざまな文化活動に取り組む団体に場所を提供し、文化を発信する拠点づくりに努めるつもりだ。「佐世保をよりおもしろい街にするために貢献したい」と意気込みを語る。
 場所の提供についての相談は向井さん(電090.2081.8551)。

ビル屋上でビートルズのライブを再現したイベント=佐世保市島瀬町(向井さん提供)
プラトンの隠れ家の店主、向井さん=佐世保市島瀬町

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