クルーズ船感染 医療者の奮闘描く 長大病院医師ら「死者ゼロの真相」刊行

「死者ゼロの真相」を手にする河野学長(左)と浜田副学長=長崎市文教町、長崎大

 長崎港に停泊中、新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船コスタ・アトランチカの医療支援に当たった、長崎大学病院の医師らの奮闘を描いた「死者ゼロの真相 長崎クルーズ船新型コロナ災害との激闘」(長崎新聞社発行)が10月1日、刊行される。
 集団感染は今年4月に発生し、乗組員623人のうち149人の陽性が確認された。長崎大学病院は国、県、長崎市などと連携し、全乗組員の検査や入院患者の治療などに当たった。同船は死者を出すことなく5月末に出港した。
 同書は長崎大の河野茂学長が監修。「崎長ライト」のペンネームを持つ同大教授で内科医の浜田久之副学長が編集した。
 3部構成で、1部は関係者のメモやインタビューを基にした小説「死者ゼロの真相」。事実に基づいた物語で、国や県などと連携して支援に当たった医療現場の舞台裏や医療従事者らの思いを描いている。専門用語は少なく、中高生でも読みやすく編集している。
 河野学長は死者が出なかった理由について、全乗組員を4日間で検査できた体制や、乗組員が若く、重症者が1人しか出なかった点を挙げる。重症者については「死んでも全く不思議ではないぐらい(症状が)ひどかったが、集中治療室(ICU)や救急、感染症、看護師のチームで助けることができた」と振り返る。
 浜田副学長は出版の狙いについて「命がけで働いている医療者の姿を伝えたかった。(同書を通じて)医療者への風評被害が軽減され、医療を目指す人が増えれば」と期待を語る。
 2部は新型コロナに関する長崎大教授の論文3本、3部はウィズコロナ時代の長崎大について河野学長の論文を収録している。
 四六判、326ページ。定価1500円(税別)。4千部発行。県内の書店やインターネットで販売する。売上金の一部は「長崎大学西遊基金」に寄付し、コロナ禍の学生支援に充てる。

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