「舟グロー」6年ぶり復活へ 対馬・豊玉高生が協力 和多都美神社・伝統の競漕17日奉納

17日の和多都美神社古式大祭に向け、息を合わせて和船をこぐ豊玉高生徒。右奥に見えるのが、台風10号で倒れた同神社「一の鳥居」=対馬市、同神社沖

 17日に長崎県対馬市豊玉町仁位の和多都美(わたづみ)神社で6年ぶりに開催される対馬伝統の和船競漕(きょうそう)「舟(ふな)グロー」に向け、地元の県立豊玉高(南波聡校長、64人)の生徒が練習に励んでいる。
 和多都美神社は対馬中部の浅茅湾(あそうわん)最奥部にあり、日本神話に登場する「彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)」(山幸彦(やまさちひこ))と、海神の娘である「豊玉姫命(とよたまひめのみこと)」を祭る。海神が住む海宮(わたつみのみや)が同神社沖にあるとの竜宮伝説が伝わり、5本ある鳥居のうち海側の2本は海中鳥居として対馬観光の名所となっている。
 舟グローは櫓(ろ)こぎの和船の速さを競うもので、同神社では毎年旧暦8月1日(今年は9月17日)の秋祭り「古式大祭」で地域対抗の舟グローを奉納してきた。しかし、地域の高齢化や過疎化を受け2015年以降は休止している。
 豊玉高生による舟グローは、同神社の元氏子総代で漁業の川崎英嗣さん(70)=同町嵯峨=が6月上旬、「高校生の力で地域の伝統を復活させてほしい」と、同校に提案。同校も地域の歴史や文化を学び、学年の団結力を高めようと応じ、6月下旬から1年の26人が地域住民の指導を受けて練習している。
 10日の練習では和船(全長約12メートル)2隻を使い、ABの2チームに分かれて同神社沖で競漕。海中鳥居までの約200メートルで競い、Bチームが勝利した。かじ取り役を務めた小島海透(かいと)さん(16)は「これからもっと上達し、地域の皆さんに僕たちの元気を届けることができれば」と、本番に向けた意気込みを語った。
 同神社の平山雄一禰宜(ねぎ)(34)は「台風10号で(海中鳥居のうち最も沖側にある)一の鳥居が倒れてしまい地域住民も悲しんでいる。高校生の若い力で、鳥居復活に向けた弾みをつけてもらえたら」と話している。

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