客船入港可否 条例改正も 長崎県、今春の集団感染を検証

コスタ・アトランチカ

 長崎港に停泊中に新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船コスタ・アトランチカ(イタリア船籍)への対応を検証している県は10日までに、船内の感染管理体制や県内医療体制の逼迫(ひっぱく)状況などに応じてクルーズ船の入港の可否を判断できるよう、県港湾管理条例の改正を含めて検討する方針を固めた。
 今春、長崎市の三菱重工業長崎造船所香焼工場に停泊していたアトランチカでは乗組員約620人のうち149人が感染。大半の乗組員は船内の個室に隔離されたが、11人は同市内の指定医療機関に救急搬送され入院した。県は長崎大や陸上自衛隊、災害派遣医療チーム(DMAT)など関係機関の支援を受け、県民への医療提供体制を守りながら乗組員の健康管理に注力するという難しい対応を迫られた。
 県は今後もクルーズ船事業を継続する姿勢を示しているが、複数の関係者によると、同様の集団感染が発生すると、自治体での対応は再び困難になることが予想される。だが現行の港湾管理条例は、感染リスクなどを理由にクルーズ船の入港や港湾施設の利用を拒否できないという。
 このため、船内の感染管理体制や県内医療体制の逼迫状況などに応じ、クルーズ船受け入れを判断したり停泊中の船への移動を要請したりする具体的な運用方針を作成。官民の港湾管理者に対し実効性のある対応ができるよう、条例改正を含め検討するという。
 クルーズ船を巡っては福岡市が、ワクチンが十分備えられるか治療法が確立するまで、博多港への寄港を認めない独自の方針を決めている。

© 株式会社長崎新聞社