松浦伝統の精霊船展示 麦わらと竹で製作 市の無形民俗文化財

市の無形民俗文化財に指定されている麦わらと竹で作られた立町の精霊船=松浦市志佐町

 長崎県松浦市志佐町浦免の立町地区で15日、市の無形民俗文化財に指定されている麦わらと竹を使った伝統的な精霊船が飾られ、住民が供え物をして先祖を弔った。

 浦免の精霊船は元寇(げんこう)の犠牲者を供養したのが始まり。以前は浦免の6地区ごとに製作していたが、近年はわらが手に入りづらくなったことに加え、人口減で作り手も減ったことから、昔ながらのわら船を作るのは立町地区だけになった。
 わら船は14日に住民25人が平戸市の農家から運んだ軽トラック1台分のわらを編んだり、縄で束ねたりして一日がかりで製作した。
 今年は新型コロナウイルスの影響で、精霊流しの行事と恒例の花火大会は中止となり、「庭見せ」といわれる町内での展示だけを実施。住民が次々とわら船に供え物を納め、先祖の霊を供養していた。
 わら船は夕方、志佐川河口の流し場まで運ばれ、午後8時から打ち上げられた75発の花火を送り火に、形だけの精霊流しの儀式があった。町内会長の野元正彦さん(68)は「年々材料のわらの入手や作り手の確保が難しくなっている」と伝統を守り継いでいく厳しさを話した。

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