自衛官募集で住基台帳利用 法規定を国へ要望 大村市「対応に苦慮」

 自衛官などの募集を目的とした自衛隊による住民基本台帳の利用を巡り、長崎県大村市が国に対し、台帳の写しの提供を可能とする旨を法律に規定するよう求めていることが6日までに分かった。
 自衛隊法施行令120条は、自衛官の募集に関して首長に「必要な報告または資料の提出を求めることができる」と規定。一方、住民基本台帳法は台帳の写しの「閲覧」請求は可能だが、提出については明文化しておらず、自治体によって判断は分かれている。
 防衛省によると、全国で昨年度、対象者の氏名や住所などの情報を紙などで提供したのは719自治体。これに対し、851自治体が閲覧のみで対応した。県内各市町によると、提供に応じているのは佐世保市など10市町、長崎市など11市町は閲覧のみの対応を取っている。
 大村市も現在は閲覧のみの対応だ。ただ毎年の自衛隊側からの要請に「対応に苦慮している」として、国が募集した本年度の地方分権改革に関する提案募集で、写しを提供する場合の根拠を自衛隊法か住民基本台帳法に明記するよう要望。追加共同提案団体として、五島市を含む全国18の自治体も名を連ねた。大村市は「要請をむやみに突っぱねることもできない。個人情報保護には配慮しており、積極的に提供する意図はない」としている。
 個人情報保護問題に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授(刑法)は「住基データの管理責任や権限を持つのは自治体。『苦慮している』という理由で国に判断を任せる対応で、住民のプライバシーを守ることができるのか疑問」と指摘した。

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