コロナと離島医療 「医師、看護師の確保が課題」 長崎県病院企業団企業長 米倉氏

「離島の感染症対応が長期化した場合、看護師の確保が課題になる」と話す米倉氏=長崎市、県病院企業団本部

 新型コロナウイルスの感染が長崎県内全域に拡大しつつある中、離島では、普段から地域医療の拠点となっている公立病院が、感染発生時の初動対応などで重要な役割を果たす。離島や本土周辺部の公立病院を運営している県病院企業団(本部・長崎市)の米倉正大企業長に、現状の態勢や課題について聞いた。

 -各病院で、感染発生に備えた態勢をどのように構築しているのか。
 壱岐市で3月、県内初の感染者が確認された。これ以前に、地理的状況から発生の可能性が高いと考え、いち早く動いていたのが壱岐病院だった。2月初旬の時点で、既に発熱外来や患者入院時の準備を整えていた。発生後は自衛隊ヘリによる、本土への患者搬送も経験した。これらの情報を他の離島病院でも共有し、備えている。
 また7月、五島で発生した事例については天候の関係もあり、公的機関の船で本土搬送した。壱岐でのヘリと五島での船。両方の搬送が無事実施できたことで、対処のめどが立った。人工呼吸器を使用しながらの搬送は困難を伴うため、重症化前の搬送に努めることにしている。

 -今後に向け想定される課題は。
 壱岐で患者が発生した際、それまで1桁台だった発熱外来の受診者が、一気に三十数例に増加した。これにより医師が不足し、本土から1人派遣を受けた。問題は、看護師の本土からの派遣が人手不足などで困難なこと。感染症対応が長期化した場合のことは心配。また離島の看護師らのストレス蓄積も課題だ。
 (7月に院内感染が起きた長崎市の)長崎みなとメディカルセンターは、外来・救急を休止したが、離島の拠点病院では、それができない。外来・救急をやりながら感染症に対応することになり、本土の病院より厳しい状況になる。そうしたシミュレーションも、各病院では行っている。

 -7月末に対馬病院の職員の感染が判明した。その後の状況は。
 接触者は全て陰性で、感染が広がる可能性は低いと聞いている。今回の発生を受け、本部から感染防止対策の徹底について改めて各病院に通知した。

 -感染の拡大・長期化は避けられないようだ。
 コロナの影響で、これまで離島で亡くなった人がいても家族らが島に行くことを断念したケースが多々あり、このため、この夏は島に戻る人が多いと聞く。(政府の観光事業)「Go To トラベル」もあり、緊張感を持っている。離島の各病院は地域で唯一の拠点病院であり、コロナに限らず医療全般を担う重責は全員が認識している。


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