原爆や虐殺テーマのドキュメンタリー映画 長崎、広島上映目指す リティ・パン監督

ドキュメンタリー映画「Irradiated」から(リティ・パン監督提供)

 原爆など戦争や虐殺をテーマとしたドキュメンタリー映画「Irradiated(イレイディエイテッド)」で、今年のベルリン国際映画祭のドキュメンタリー賞を受賞したカンボジア出身のリティ・パン監督(56)が4日までにオンラインで長崎新聞社のインタビューに応じ、来年までに被爆地の長崎、広島両市で上映したい考えを示した。映画制作のため、長崎を複数回訪れたというパン氏は「作品を通して原爆や虐殺について考えてほしい」と述べた。
 イレイディエイテッドは英語で、放射線に「被ばくした」の意味だが、パン氏は「もし過去の惨禍に目を向けなければ、同じことが繰り返されてしまうという意味も込めた」と話す。
 未公開の同作品(2019年完成、約88分)は、米軍による長崎と広島への原爆投下や、ベトナム戦争での枯れ葉剤散布、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)などを題材とし、当時のモノクロ写真なども活用。作品を通して「人類が持つ『危うさ』を表現した」。18年と19年に長崎や広島で被爆者と面会し、継承への思いを受け止め、制作に取り掛かったという。
 パン氏は、1975年に始まったカンボジアの旧ポル・ポト政権による大虐殺で両親や友人を失い、自身も強制労働所に収容された。79年に脱出し、タイを経てフランスに移住、パリで映像制作を学んだ。ポル・ポト政権の大虐殺を扱った作品「消えた画(え) クメール・ルージュの真実」は、2013年の第66回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で最高賞を獲得した。


© 株式会社長崎新聞社